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THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-3



冷たく男に言い放ったのは、拓斗。
Tシャツに薄いパーカー、ジーパンという格好からしてもう着替えが終わったのだろう。
時間が経っても瑞稀が来ないので不安になって迎えに来たという感じ。
自分の大好きな人が迎えに来てくれたというのは、すごく嬉しいモノだ。
瑞稀は、さきほどまでの男に対しての怒りも今の抱きしめられている状況も忘れて拓斗の登場に喜んだ。

「拓斗・・!」
「お、前・・。鈴乃、拓斗!」

先程の余裕とは打って変わって、拓斗の姿を見た途端に慌て始める男。
それもそのはず。瑞稀は気づいていなかったが、この男は準決勝で拓斗がストレートで勝った相手。男にとって立場が無い相手だ。
拓斗も、相手が誰か分かっているのかとても冷たい視線を男に投げかけていた。

「負けてもなお、人のこと馬鹿にした言い方するなんてみっともねえな」
「・・・くっ・・」
「ナンパなんてくだらないことする前に稽古でもしろよ。こいつに触ってんじゃねえ」

殺気とも言えるような恐ろしい気迫を凄ませたまま、拓斗は男に言い放った。
それに恐れをなした男は慌てて逃げ去り、自分の控え室へと消えていった。その様子をポカンと見ていた瑞稀は、自分を抱きしめる腕が緩んだのを感じて拓斗へ振り向いた。自分を助けてくれた人へ。
その人の顔は、無表情だった。

「・・・拓斗・・?・・あの、ゴメン。・・ありがと」
「・・・・」

謝ったのにも関わらず、何も反応がなかったので言葉が違うのかなと思い、今度はお礼を言った。が、やはり何も反応が得られない。
瑞稀は首を傾げた。どうして何も言わないのかと。
その言葉を告げようとした瞬間に、不意に抱きしめられた。拓斗の不意打ちの行動に驚いた瑞稀だったが、抱きしめられる力の強さに、すぐに顔を顰めた。背中に回そうとした腕を、服を掴んで抵抗することに変えるしか出来なかった。

「・・ちょ・・、た、たく、いたっ・・」
「・・お前は何であんな奴に捕まるんだ」
「・・・・いっ・・は・・ぁ・・?」
「・・・お前が無防備だからナンパなんかされるんだろ。」
「・・たくと・・くるしっ・・」
「真っ直ぐ俺のところ来ればいいのに、他の奴んとこに行ったり。何もされないとでも思ってんのか・・。不安なんだよ馬鹿野郎」
「・・っっ、は、なせ、アホ拓斗!!」

最初こそは大人しくされるがままになっていたが、段々と告げられる言葉に腹が立ってきた。今日はさっきから一方的に言われてばかりだ。
次第に強まる力を込める腕を無理やり剥がす。抱きしめられたことで上がった息を整えて恥ずかしさに染まる心音を押さえ込んだ瑞稀は、面食らっている拓斗に向かって叫んだ。

「あーもう!!グチグチ文句言うくらいなら素直に、不安だから勝手に離れるなとか言えばいいでしょ!!遠回りな怒り方すんな!!」
「・・・え・・」
「迷子になった私も悪いと思うけど、控え室の場所教えてくれなかった拓斗も同罪でしょ!?無防備とか私に分かるかっての!!」
「・・いや・・それは・・」
「私がホイホイ拓斗以外の男についてくわけないでしょ!!そんなに心配ならずっと手握ってれば・・いい・・で、しょ・・?」


言葉が出るままに、叫んでいた瑞稀。拓斗の顔が俯いたことに気付いて、その語尾が弱くなった。いや、まだ言いたいことがあるのだが。
さすがに怒らせたかなと頭の片隅で思っていると、拓斗の肩が震えているのが分かった。
まさか泣いてるのかと思って慌てて顔を覗き込んだ瞬間、拓斗の顔が上がった。
ものすごく、笑いながら。
泣いてるわけでもないし、怒っているわけでもないので少し安心はしたが笑われる理由が分からない瑞稀は怪訝な顔をするしかなかった。
その顔を見た拓斗が、笑いを抑えたのを確認して瑞稀は表情は変えずに拓斗に声をかける。

「・・・・拓斗?」
「いや、悪い・・。まさか瑞稀にそんな言われると思わなくて・・」
「・・・へー」

自分がここまで言ったことに笑われたと分かると、瑞稀は腹が立った。その怒りを抱えたまま深い溜息を吐き出した。
言葉がそこで終わりではなかったらしく、この怒りをどうしようかと思っている瑞稀に届いた。
「俺、瑞稀にこんな愛されてんだなって」・・と。
瑞稀は、その言葉の意味が分かるとバッと振り向いた。顔を真っ赤にさせて。

「なっ・・」
「だって、そういうことだろ?だって、俺以外の男にはついていかないんだろ」
「うっ・・。それは、その・・」

自分が言った言葉を思い出して、一つ一つ意味を頭の中で確認しては顔を真っ赤にさせた瑞稀を見て、拓斗はそっと頭を撫でた。勿論、瑞稀が真っ赤な顔を自分に向けるのをわかって。
予想通り、瑞稀は顔を上げた。その唇に、温もりを感じたのはわずか一秒後・・。




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