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THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-2




客席を出て、正面玄関にもう一度出ると大会に出場して、表彰式を眺めていた選手たちが列を作って戻るのが見えた。
瑞稀はあれについていけばいいと直感し、慌てて後ろからそれを追いかけた。
すると、いつも音楽ホールで見るような扉が長い廊下にたくさん並んでいるところに出れた。
あとは一つ一つ、拓斗の控え室を探していくのみ。

「・・良かった・・。これなら、迷子の心配なさそう」

そう小さく呟くと、瑞稀はまず長い廊下を奥へ奥へと歩き始めた。キョロキョロと、控え室の扉に書いてある名前を確認しながら目当ての名前を探す。
それでも、なかなか見つからずに曲がり角に出てしまう。
右を見ても左を見ても、控え室しか無さそうでどちらに行けばいいのか悩む。
せめて拓斗からどう行くのか聞けば良かったと溜息を吐くと、とりあえず右に曲がる。その瞬間、ドンっと強い衝撃が自分の全身に当たって少しふらついた。
人にぶつかったんだと悟った瑞稀は顔を上げた。大学生くらいの、男の人だった。
瑞稀は頭を下げた。

「す、スイマセン!」
「いや、君こそ大丈夫?」
「あ、ハイ。スイマセン。」
「気にしなくて良いよ。・・それより、こんなところに何か用?」

そう問われて、瑞稀は一瞬どう答えようか迷う。言葉を失う。なんて言えばいいのか。
彼氏が待ってる控え室を探しているんです。・・・・外で待ってればいいだろ。
優勝した人に会いに行くんです。・・・・キミ、どういう関係?
良い言葉が頭に出てこなくて瑞稀は頭を悩ませる。ただ、あの、えっと・・などと濁す言葉しか出てこない。

「もしかして、俺に用事?」
「・・・え?用事?」

さあなんて言おうかと考えていると、優しそうな笑顔を向けている相手の思ってもみない言葉。
瑞稀はそれに理解ができなくて思わず聞き返す。
キョトンとした顔を浮かべて目の前に居る相手の顔を見ると、さきほどの優しい笑顔では無くどこかニヤついた笑顔を浮かべていて、瑞稀は気持ち悪くなった。

「それならそうと言ってくれればいいのに」
「は!?何のことですか、てか私、」
「キミみたいな可愛い子の誘いなんて断らないのに」
「ちょ、待ってください!私、アナタに用事も興味もないんですけど!」
「えー、じゃあ、何でこっち来たの?こっち側の控え室には俺しか居ないのに」
「なっ・・!」

迂闊だった。・・というより、やはり控え室の場所を拓斗に聞けば良かった。
瑞稀の頭に、そんな言葉と共に危険信号が点滅し始める。
ヤバイんじゃないのかコレと思っている瑞稀の腕を、男が掴む。ぞわっという寒気が背中を走った。

「・・!離してください!」
「何で?俺のファンなら、嬉しいでしょ?」
「そんな訳ない!私は、アナタのファンじゃないし知らない!」
「にしても、俺にもファンがまだ居たなんて。全部鈴乃に持ってかれたと思ってたのに」

男は瑞稀の腕を掴む力を緩めないまま独り言をぶつぶつ続ける。頑張って腕を振り払おうとしている瑞稀は、その独り言に途中で反応した。

「・・・は?・・鈴乃?」
「何、知らないの?さっき優勝した鈴乃拓斗。アイツが女子のファン全部持ってってんの。女子にキャーキャー言われてさ」
「・・・・」
「ま、男だったらチヤホヤされて嬉しいし?アイツだって、女子はべらかせて楽しんでるんだろうし」
「!!」

その言葉に、瑞稀は頭に血が上った。持てる力全てを使って、勢い良く男の手を振り払った。伊達に吹奏楽部で遠征などの時、楽器運びをしていない。まさかこんな力があると思わなかったようで、驚いている男の顔をキッと睨みつけた。

「拓斗はそんな事絶対しない!!人のことなめんのも大概にしろ!!」

思わず、口調が男っぽくなってしまったが仕方ない。というより、瑞稀にとって拓斗を傷つけるような言葉を吐いたこの男が許せずに怒りを露わにした結果だ。
それでも、面白くないのは相手の男の方だった。自分を拒否した瑞稀が気に食わないようで、意地でも泣かしてやる。そんな表情を向けて、瑞稀に手を伸ばした。

「・・何、お前鈴乃とどういう関係なわけ?」
「!!さわ・・っ!!」

その指が、瑞稀の首に触れようとした瞬間瑞稀はそれを振り払おうとした。
が、それよりも早く自分の身体が後ろに引き寄せられた。背中には、大きな、瑞稀の好きな温もり。
男の手が、強い音を立てて振り払われた。瑞稀を後ろから抱きしめている人間によって。

「恋人だけど」


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