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THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-5



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2学期に入る直前、学校行事の一つである二泊三日の臨海学校が行われた。
場所は○子市。この季節、観光客が大勢訪れる海のスポット。
昼間は海で大はしゃぎ、夜は花火などで盛り上がった次の日の二日目。
運悪く天気が崩れ、朝から雨が強く降っていた。海での予定が無くなり、大人しくしている訳もない生徒たちはホテルにある広い体育館で好き放題に遊んでいた。

夜、予定にあった肝試しが場所を変更して行われることになった。
最初の予定では、海岸沿いを歩き森の入口でゴールだったが、午後から大荒れになってきた天気では海の近くに近づけられる筈もない。
そこで、体育館をスタートとしてホテル内を周り、ペアの人数分用意してある先生手作りの旗を取り、体育館に戻ってくるというコースに変わった。
その内容を聞かされた、体育館に集まった生徒たちも文句は出なかった。
そして、ペアのくじを先生たちが準備している奥で、秋乃と拓斗が不安になっていた。

「・・瑞稀、来ない」
「あぁ・・。なにやってんだか。ジュース買いに行っただけで」
「だからついていこうかって言ったのに」

秋乃はそうボヤくと隣に座っていた拓斗を睨んだ。まるで、お前が一緒に行けば良かったんだとでも訴えるかのように。
それを軽くにらみ返すことでかわした拓斗は窓を見て、溜息をついた。
外は先ほどよりも叩きつけられるように強くなっていく雨。それだけでなく、ゴロゴロと今にでも落ちてきそうな雷の音が聞こえ始めていた。

二人が今、気がかりだったのはこの場にいない瑞稀のことだった。
先生たちによる集合がかけられ、体育館に着いた時誰も来ていなかったので自動販売機へジュースを買いに行ったまま、戻ってこないのだ。
朝から一緒にいた二人は、瑞稀が雷が鳴りそうな雲を見て顔を強ばらせていたことを知っている。
だからこそ、ついていこうとした。が、瑞稀は見栄を張って大丈夫だと言った。
強がりな言葉だと分かっていたが、止められそうもなかったので仕方なく一人で行かせてしまった。
そうそう遠くない場所に、自動販売機はある。もうそろそろ帰ってきていい頃合いだった。

「・・八神・・、大丈夫かな」
「・・・まったく・・。心配なら迎え行ってくれば?喜ぶかもよ」
「茶化すなよ」
「本当のこと言っただけだし?」
「おい・・」
「・・本当に、行ってきてあげたほうが良いんじゃない?」
「・・・あぁ、そうだな」

そう言葉を返して立ち上がった時、眩しい位の光が一瞬してからズドンッと雷が落ちた。
大きく鳴った雷と突然真っ暗になった空間で女子がキャアア!!と叫んだ。
男子も、身体をびくつかせている。拓斗や秋乃もこればかりには驚いたようで身体が固まってしまった。
パニックになりかけている生徒たちを先生が落ち着かせようと持っていた肝試し用の懐中電灯を照らしながら声をかけ始める。

「大丈夫、ブレーカーが落ちただけみたいだから。落ち着いてね」
「誰もここから動くんじゃないぞ」

先生たちの声で次第に落ち着きを取り戻していく生徒たちの中で、一人だけ未だに冷静さを失っている人がいた。瑞稀を迎えに行こうとした拓斗だ。

「(八神、アイツ・!!)」

拓斗は、先生が持っている懐中電灯を奪うと先生とクラスメイトたちの静止の声も聞かずに体育館を飛び出した。
ホテル全体のブレーカーが落ちたようで、廊下もどこも真っ暗で懐中電灯無しでは歩けないほどだった。
そんな空間を手に持った小さい懐中電灯一つで辺りを映しながら走った。
恐らく落ちた雷で怖くなって動けなくなってしまった大事な女の子を思い浮かべて。


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