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THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-1



暑い季節が訪れた。季節は夏。
瑞稀は一学年上がって中学2年生になっていた。
一年も経つと学校に慣れて、入学した当初に感じていた嫌悪感や小学校の名残もなくなっていた。
それでも、どうしても拓斗とのことはどうしようもなく、関わらない関係がずっと続いたままになっていた。

「瑞稀先輩。聞きたいことがあるんですけど」
「ん、何?」

拓斗のことを思い出しては深い溜息をついた瑞稀に、今年の春吹奏楽部に入った後輩から声がかかった。
今は部活のミーティングが終わった頃で、もう既に解散の合図がかけられていた。

「鼓笛フェスってどんなものなんですか?」
「あ、それウチも聞きたい。瑞稀、どんな感じ?」

隣に座っていた恵梨も、後輩と同じ疑問を持っていたようで瑞稀に問いかける。
一瞬、質問の意図に戸惑ったがそういえば今年はコンクール出られない代わりに鼓笛フェスに出ることになったんだと思い返して質問に応えるべく二人に説明を始めた。

絽楽学園吹奏楽部は今年、人数不足の為にコンクール出場を断念した。
その代わりと言ってはなんだが、いつも瑞稀が所属している鼓笛隊が毎年出ている鼓笛フェスティバルに学校代表として出ることが決まった。
この、瑞稀が居る鼓笛隊は以前も説明したが地域を代表する少年少女による鼓笛隊だ。
それらは都道府県に何個もある。その中で毎年夏に全国から全ての鼓笛隊が集い、演奏を披露する鼓笛フェスティバルと呼ばれるモノがある。
勿論、コンクールのように賞がある。
指揮者賞、優秀演奏者賞、個性演奏者賞、優秀団体賞・・。どれもプロを目指す者たちにとっては取っておきたいものばかり。
また、若手育成の為にプロのオーケストラが観に来る場合も多く、上手くアピール出来れば声がかかることだってある。
つまり、このフェスティバルはコンクールとはまた違った意味で音楽家への登竜門なのだ。
実際に、今国内のオーケストラで活躍している若手の中にもこのフェスティバルでスカウトされてデビューした者が何人も居る。

実は瑞稀の叔父もそのスカウトされた一人だったのだが、きっぱり断ってトランペット自体を辞めてしまった。理由は未だに話してはくれないが。
そんな叔父を瑞稀は尊敬している。多分、トランペットよりもやりたいことがあったんだろう。スカウトを蹴ってまでやりたいことが。
それが何かはまだ瑞稀には分からないがただ凄いとしか言い様が無く、尊敬している。
自分がトランペットを始めた時も、一番教えてくれた。
今。自分がここまで吹けているのは少なからず叔父のおかげだ。
ありがとう。

心の中でお礼を言っていると、後輩と恵梨から続きの催促。
自分の世界から戻ってきた瑞稀は促されるままに鼓笛フェスの話をした。
途中で、先輩たちも加わり、賑やかになった。


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