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THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-8



「・・・っ!!」

バランスを崩しそうになったが、恵梨が緩急をつけたことにより転ばずに済みスピードを戻した。
さっきの一瞬で取ったバトンを強く握り締めて。

『よっしゃーっ!!!』

4組全員から喜びの叫びが上がる。他の一年の4クラスは目の前の信じられない光景に驚き、体育座りをしていたが全員が立ち上がった。
ほかの学年、教職員、保護者も興奮していた。

「ラスト50!!行くよ、瑞稀!」
「了解!恵梨!」

最後のアンカーだけは150M走ることになっていて、目の前に居る5組のペアを抜く為に最高スピードを出すには充分な距離。
カーブが無い、直線距離。自分たちの足を必死に動かした。

40、30、20、10M・・。
ゴールテープまで、もうすぐ。もう二人は5組のペアと並ぶところまで来ていた。
たが、追い越すところまでどうしてもいかない。

「(あと、ちょっとなのに・・っ!!)」

そう思った時、空いている瑞稀の右手がギュッと握られた。
驚く前に恵梨から覚悟を決めたかのような強い声がかけられた。

「上げる!」
「・・!!うん!!」

その言葉は主語も無かったが、信頼を寄せている瑞稀には充分伝わった。
・・スピードを“上げる”から転ばないように握り締めてて・・。
読み取った通り、恵梨はもうひと押しという感じで今までよりも強く地面を蹴った。
一回も合わせたことの無いスピードに顔をしかめたが、それよりも負けたくないという想いがもう限界寸前だった瑞稀の足を動かした。

二人で、ゴールテープを切る!
そう願いを何度も頭で繰り返しながら握っている右手に力を込めた。
恵梨も力を込めて握り返す。その純粋な願いが奇跡を呼ぶことを願って。
そして、5組のペアを二歩分抜かしたその瞬間、ゴールテープを切った。

「・・・・!!」

全員が息を呑んだ。
瑞稀、恵梨はゴールテープを切って少し駆け抜けたあとバトンを投げ出し二人で倒れ込んだ。それは、5組のペアも同じだった。
慌ててそれぞれのクラスメイトたちがペアの元に駆け寄る。

「瑞稀ちゃん!恵梨ちゃん!」
「大丈夫!?」

クラスメイトたちが瑞稀と恵梨の足を結んでいる紐を手早く解き、抱き起こす。
息を整えながら、瑞稀と恵梨は周りが興奮していて、よく分からない今の状況を聞いた。
二人にクラスメイトが何があったか説明をしようとした時、審判者からアナウンスが入った。結果発表。

「ただいまの勝負!優勝は*分**秒の・・」
「「・・・・」」

騒がしかった空気が、途端に静まりかえる。
ひと呼吸おいてから審判者が先程よりも声を大きくして叫んだ。。

「4組!!」
「・・・!!」

審判者の発表を聞いた4組全員が喜びの歓声を上げた。周りからは吹奏楽部の演奏が終わったときよりも拍手が送られた。
その中で、一人。目を瞬かせて状況を飲み込めていない生徒が一人。
瑞稀は肩を上下に息を整えようとしているままで、奇跡が起きたことに気付いていない。
そんな親友に、恵梨が隣に座った。

「・・勝ったんだよ、瑞稀」
「・・・本当、に・・?」
「うん。優勝したんだよ。奇跡、起きたんだ」
「・・やった・・やった・・やったあ!!!」

一人遅れて喜びの声を上げた瑞稀に、クラスメイトから笑いが起きるがすぐに「よっしゃーっ!!!」と全員でガッツポーズを空に上げた。
が、真ん中にいた瑞稀の限界な足では立っていられずふらついた。

「・・あっ」

倒れるかと思ったら、恵梨が引っ張ってくれてなんとか片膝をつく程度で済んだ。
お礼を言うと、軽く返された。そのまま顔を見合わせると二人同時に手を上げた。
一瞬、同じタイミングで同じことをしていることに驚き笑った。
そして強くハイタッチを交わした。辺りにパアンと心地いい音が響く。

「やったね!恵梨!!」
「瑞稀が頑張ったからだよ!!」

『勝ったぞーっ!!』

空に、二人の声が響いた。クラスメイトたちもそれに乗せられたようで思い思いに声を上げ始めた。

こうして、めでたく親友と呼べる人が出来たおかげで瑞稀は中学最初の行事を楽しく終えた。



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