海水欲-7
「変な旅館だな」
妙に派手な外観を眺めながら薫子が呟く。
「旅館じゃなくて、ラブホテルっすよ。出合い茶屋みたいなもんです」
昔もこんな感じの宿屋が有り、出合い茶屋と呼ばれていた。
「ああ、成る程」
俺と薫子の時代錯誤な会話に、きょとんとして顔を見合わせている今村と加藤に笑いながら、車を離れの駐車場に止めた。
「わぁっ見てっ!薫子ちゃん!これが海よ!!」
荷物を降ろす男共をほっといて女2人はさっさと部屋に入り、窓を全開させる。
窓からはどこまでもどこまでも続く青い海が一望できた。
「……おい、猿。どこが湖なんだ?」
窓枠に手をついて身を乗り出し、景色を食い入るようにして見ながら文句を言う薫子。
だから言ってる事と態度が違うってよ。
耳はピーンと立ってるし尻尾ははち切れんばかりに振られてるし……かっわいいなぁ〜もう。
「ここから直ぐ海岸に行けますよ」
荷物を部屋に入れた俺は、薫子の横に並んで景色を眺める。
「行きます?」
俺の問いかけにバッとこっちを見た薫子の目はキラキラ、尻尾はブンブン……俺は堪らず抱きついて濃厚なキスをしてしまい、薫子と今村にどつかれたのであった。
「場所をわきまえろよ、猿」
「だあって可愛いんだもんよ〜見たろ?あの言葉と裏腹な態度……萌えるっつうの」
俺らは海岸の砂浜にシートを敷いたり、パラソルを立てたりしながら話している。
女共は準備に時間がかかるんだと。
「なあ、今村」
「んだよ?」
「水着見せてもらったか?」
俺の質問に今村は憮然として答えた。
「いや、高野は?」
「まだ。早く見てぇなぁ〜」
準備が終わった俺達は男2人、シートに座って周りを見渡す。
俺ら以外にもカップルや家族連れ、ナンパ目的の男達……多からず少なからずの丁度いい人口密度。
(あっちの岩影か、少し泳いだ先の小島……もしくは、ちょっと歩いた先にある場所も良いな)
俺の頭の中は野外プレイ一色。
きっと、今村の頭の中も似たようなもんだ。