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私の夏
【青春 恋愛小説】

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クジライルカ-2

 気持ちが良くなったところで、喉の渇きを癒そうと思い、ペットボトルのお茶をグビグビと飲んでいたところに、それが起こった。

「あれ?もう船酔い治ったん?」

 全くの無防備な状態で、遠慮の無いデカイ声で後ろから声を掛けられたのだ。あたしはビックリして「ブ―――!」と、飲んでいたお茶を吹き出してしまった。

「ゲホッゲホッゲホッ」

「だ、大丈夫か」

 大丈夫じゃない!苦しい

「ゲホッ、う、後ろから急にゲホッ」

「ごめんごめん、昨日しんどそうにしてたから気になっててん」

 こいつか!サングラス男め!

「ゲホッ、もう大丈夫ゲホッ」

「あのなあ」

「ゲホッなんですか」

「クジラみたいやったで」

「はい?」

「しゃーから、今の吹きだし方。ははは」

 うるさいわ!

「恥ずかしいこと言わんといてください」

「ごめんごめん、じゃあ、可愛くイルカにしとくわ」

 謝り方も軽いし。

「それはそうと昨日はタオルありがとうございました」

 こんなヤツでも一応お礼は言っとかないとね。

「いやいや、ちょっとビックリしたけどな。初対面やのに『すみません』とか『プリーズ』の言葉が無くてイキナリ『タオル濡らしてきて』やったやろ。あれはインパクト強すぎたわ」

 うっ!そうだっけ?

「すみません、昨日は頭が痛かったから普通じゃ無かったみたいです」

「今のクジラ、イヤ、イルカみたいなのも、普通の女子と違っておもろかったけどな」

 ナニこいつ!恥ずかしいことばっかり!もうイヤや、部屋に戻ろうっと。

「すみません。友だちが部屋で待ってるので失礼します」あたしはそう言ってベンチに置いていたトモちゃんたちのお茶に手を伸ばしたところへ、 サングラス男は素っ頓狂な声を出した。

「あっ、イルカや!」

 ひつこい!もう我慢できないぞ!

「いい加減にしてください。吹きだしたのもそっちが驚かせたからでしょ」

「ん?違う違う、アレ見てみ」

「えっ?なんですか?」

 あたしは怪訝そうな顔をしつつ、サングラス男が指差す方向を視線を向けた。するとそれは直ぐに目に飛び込んできた。

「うわ―――!」

 あたしは思わず感嘆の声を出してしまった。

「なっ♪」

 サングラス男もあたしがそれに気付いたことが嬉しそうだった。

 凄い凄い!

 あたし達の目の前を7,8頭のイルカがフェリーと並行して泳いでいたのだ!

 あたしはさっきの腹立たしさも忘れて、いつしかサングラス男の横に並び、時折ジャンプするイルカたちに見入っていたのだ。

「キャー!可愛いー!」

 テンションが上がってきたぞ―――!夏の海ってサイコ―――!


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