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私の夏
【青春 恋愛小説】

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沖縄の海へ行こう!-1

 携帯電話の無い頃の恋愛とは不便なもんだ………



―――21世紀まであと十余年―――

 夜の8時に出港した船が目的地に到着するのは翌々日の朝の7時30分。乗船時間が32時間か…

 大阪南港から小さなフェリーに乗り込み、一日半を掛けて到着するのは都会の喧騒を忘れさせてくれる夢の島。

 本当は親の小言を忘れさせてくれる夢の島だけどね。

 何かと気の合うあたし達4人は兵庫県宝塚市の高校を卒業してからも交流がつづき、この夏の旅行計画を立てた。

 頭の固い両親を説得し続けること1ヶ月と余日。旅行先から毎日電話を入れることを条件に、ようやく許可を得たのがツアーの締切日の前日だった。

 短大の講義を真面目にこなし、品行方正をアピールしつつ夕方から夜にかけて近所の喫茶店でアルバイトをして、旅費をなんとか捻出できた。両親から家の近所でならとの条件付きでアルバイトの許可も勝ち取ったのだ。

 せっかく行くんだから、友だち同志の記念の旅行として目的地は豪華にしたいよね。

 社会人の彼氏が居るユーコの「あたし海外に行きたい」の大人の意見はさすがに却下され、トモちゃんは「みんなに任す」といつものように協調性を発揮した。そしてあたしとミヤちんは予てからの憧れの地、沖縄を薦めたのだ。森高千里も『決〜め〜た♪』って盛んに歌ってるしね♪

 結局この意見がとおり、初めての旅行は沖縄に決定。

 でも、アルバイト代をコセコセ貯めても多寡が知れたモノ。当然、費用の安いツアーをチョイスしなくては。

 で、選んだのが船中で2泊する3泊6日の格安旅行。乗り物に弱いあたしは一抹の不安を抱えつつも、サイフと目的地の居り合いを付けた旅行プランに総じて満足満足なのだ。帰りは生まれて初めての飛行機だしね♪

 青い海と青い空の下、きっとステキな出会いが待ってるぞ!父よ母よ、ひと夏の出会いを許せよ!

 と、ハシャイでいたのがさっきまで………

 目の当たりにしたフェリーの余りの小ささに愕然。乗船して押しこまれた2等船室に呆然。同室の顔触れに唖然。

 ナント畳敷きの部屋に他の3つグループと一緒に押し込まれてしまったのだ。狭い、とにかく狭いのよ。

 そのグル―プの内訳が、あたしたち4人のグループの他に、女の子3人グループ、カップルの2人、そして、男4人グループ。総勢13人!こんなのツアー会社から聞いてないぞ!

 しかも雑魚寝よ雑魚寝。これから32時間もこの窮屈な空間で見ず知らずの人たち(特に男)に囲まれてあたしは耐えれるのだろうか。

 家を出てからの解放感がこのフェリーに乗った途端に一気に萎んでしまった。

 同室者をジロジロ観察する訳にもいかず、一瞬チラ見をした他のグループの印象は以下のとおり。

【検証@ 女の子3人グループ】
 パッと見の印象は黄色の人たち。金髪と茶髪そして派手なメイクでとにかくケバイのよ。チョット怖い感じで、正直余り関わりたくない感じ。

【検証A カップルの2人】
 自分たちの世界に入ったきりで目のやり場に困ってしまう。いっ!そんなとこでキスするか?場所をわきまえろ、バカップルめ!

【検証B 男4人グループ】
 女の子との同室を明らかに喜んでいる様子がアリアリで、それを隠そうとしない神経に辟易。こいつらが発する『女ばかりや』『より取り見取りやな』と言う言葉がヒソヒソと聞こえてくる。部屋の大きさを考えろ!こっちには絶対に声を掛けてこないでよ…

 これらの事象が心構えをする間もなく身に降りかかったことを認識するにつけ、萎んだあたしの心にさらなるブルーを呼び込んだみたいだ。

 あたしが欲しいのはさわやかなコバルトブルーとエメラルドグリーンなのに…

 しかし、お父さんがこの状況を見たら二度と旅行に行けないぞ。ここでの写真撮影は禁止にしなくっちゃ。記念写真も自由に撮れないなんて………

 ダメだダメだ。このブルーは一過性のモノだ。あと32時間後には楽園が待ってるんだ。心に希望を持つんだ。コバルトブルーだ!エメラルドグリーンだ!楽園でのステキな出会いだ!

 と、無理やり気持ちを切り替えたのだが、この後、さらなるブルーな出来事が私に降りかかってきたのだった。


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