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藍雨
【SM 官能小説】

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藍雨(後編)-1

燿華さんに初めて接吻したところは、彼女の細い足首だった…。

ぼくは、燿華さんの足元に跪き、彼女のどこか切なげな足首に頬ずり、唇を寄せた。そのとき、
彼女のからだの中から匂い立つ悲しげなものが、ぼくの心の淵をゆるやかに漂いながら撫で
上げていった。


不思議だった…。

彼女の黒いハイヒールの先端に唇を這わせた瞬間、彼女の匂いは、ぼくの中で、ふわりとした
甘酸っぱい恋の匂いへと変わっていったのだ。

ぼくは、いったい何を燿華さんに求めていたのだろう…。いや、彼女が与えるすべてのことが、
ぼくの心のどこかを、まるで夜空の流星からこぼれ落ちた、一筋の光のように瞬かせてくれたよ
うな気がしたのだ。


黒い艶やかな下着に包まれた彼女は、長い睫毛でふちどられた濡れた瞳を細め、孔雀が羽を広げ
たような籐の椅子に腰を降ろし、美しすぎるほどなめらかな脚を組んでいた。

その彼女の瞳に白々とした驟雨に霞んだ空が見えたとき、彼女のなかにある見えない物語を、
なぜか優しく指でなぞってあげたいと思ったのは間違いなかった…。


…痛くしてください…

そんな映画のセリフのような言葉を、ぼくは、自分でも素直すぎるくらい恥ずかしげ気もなく、
燿華さんに吐いた。

ぼくは、彼女に虐められるだけで胸がいっぱいになる。吐きかけられる彼女の言葉、頬を打つ
彼女の掌、ペニスの幹に喰い込む彼女の指の爪…そんなとき、ぼくは、燿華さんの心とからだを
抱きしめたいほどからだの中が充たされたのだ。


燿華さんは、床に横たわった全裸のぼくの陰毛をハイヒールの踵に絡めながら、ペニスを踏みつ
け、捏ねまわした。彼女の脚に踏みつけられたぼくのペニスが、彼女の乳色のあたたかい子宮の
奥を恋慕うように切なげに息づき、嬉しそうな嗚咽を洩らした。

溢れる精液が、からからに枯渇するまで彼女に搾りとられ、烈しく虐められたい…虐められるこ
とで、ぼくは、燿華さんとの恋の高みに達したい…そう思い続けるこたができた。

そして、彼女に嬲られ、痛めつけられるほど、ぼくの恋は美しく彩られ、微かな怯えとともに、
恋の濃さを増していく、素敵な瞬間を迎えることができるのだ。



昨夜、初めて出会った、名前も知らない年上の女が帰ったあと、ぼくだけがひとり残されたホテ
ルの部屋の外は、あいかわらず藍色の雨が降っていた。

雨はしだいにあのときの燿華さんの涙のように紫陽花色へと霞んでいく。淡い光が水彩絵具のよ
うに重なり合い、溶け出し、薄い膜で彼女の涙を包み込もうとしていた。


白さを増していく雨の黎明のひととき… ベッドの上に全裸のからだを投げ出したぼくを、窓か
ら差し込む淡い光が優しく包み込んでいく。


…その人のことが、今でも好きなのね…好きで好きでたまらない…あなたは、私を抱いているあ
いだも、ずっと初恋の人を私に重ね合わせている…

年上の女が、ぼくを見つめながら小さく囁いた言葉が、ぼくの中に静かに残り続けている。



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