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藍雨
【SM 官能小説】

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藍雨(前編)-4

「あなたって、ロマンティストなのね…」
薄い化粧をした年上の女は、ハンドバックを手にしながら、唇に優しげな笑みを浮かべた。

「いいのよ…気にしなくて…わかっているわ…わたしとセックスするあいだも、きっとその初恋
の女の人のことを考えていたのね…でも、素敵だわ…いつまでもそんなふうに初恋の人を感じら
れるなんて。わたしには、とても羨ましいくらいよ…」

…また、その初恋の女性と会えたらいいわね…と言いながら、女はおもむろに部屋を出て行った。



静まりかえったホテルの窓の外は、どこか眠たげで鉛色に沈んでいた。藍色の雨が、燿華さんの
思い出をゆっくりと瞼の裏に描き始める。

あの頃、燿華さんを失ったぼくは、自分のからだが醒め果てていくのが恐かった。ぼくは、今で
もずっと彼女を待っているような気がする。失った初恋のかけらを、今でもさがし続けている
自分に、ぼくは小さなため息をついた。



あれから、十数年がたつ…

黒い革のコスチュームが、燿華さんの白すぎるほどの艶やかな肌を妖しく彩っていた。
SM用のプレイルームのオレンジ色の灯りの中で、ぼくの裸体は、燿華さんに囚われた獲物のよ
うにだらりと天井からぶら下がっている。

頭の上部で伸びきった腕は、ぼくの手首を束ねるように枷を嵌められ、天井の滑車に絡んだ鎖に
繋がれている。淡い灯りのなかで飴色に照り映えるぼくの裸体が、床からわずかに浮き上がり、
淡い毛根に包まれたペニスは、少しだけ堅さを含みながら、生まれたばかりの小鳥のように小さ
く囀っていた。


ぼくは彼女をずっと待ち焦がれているのだ。彼女が近づく気配とともに、ぼくの吐息が荒くなり、
彼女の手にした一本鞭の硬い柄が首筋をなぞったとき、ぼくは彼女の性器に溢れる蜜液の渦のな
かに溺れるように欲情する。


肩までのびた艶やかな黒髪、深海に漂うような神秘的な光を帯びた瞳、そして、ぼくの憧れを吸
い込む柔らかな乳房の谷間…。下腹部へ続くゆるやかな起状は、愛くるしいようなふわりとした
恥丘のふくらみへを描いていた。


燿華さんのからだのシルエットが、波うつように眩しく瞳の中に広がってくる。そして、電灯の
酷薄な光に擽られながら、ぼくは、陰嚢の奥を針でなぞられるような欲情に充たされ始める。

ぼくのからだは、溶けてしまうほど熟れ、脆くなり、いつのまにか初々しいくらいの甘い情感に
ふちどられていく。ぼくのものが、ぷるぷると息づき、無性に燿華さんを欲しがり始めていた…。


それは、ぼくの淡い感傷が、瑞々しい恋に変わる素敵な瞬間だった…。


ペニスに浮き上がるぬらぬらとした包皮の翳りに感じる彼女の視線に、ボクはごくりと唾液を呑
み込む。ぼくは、今すぐにでも自分のペニスを血が滲むくらい強く棘のある蔓で縛られ、ペニス
が削がれるくらい強く鞭で打って欲しいとさえ思っていたのだ。



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