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偽りのデッサン
【熟女/人妻 官能小説】

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第17話 38歳の男-2

そこには、光加減でハッキリ分かるほどの深く刻まれたシワや染み、そして、髪を掻き上げれば、染きれてない白髪が数本とある、紛れもない睦美の顔が写っていた。
それを目の当たりにして思いつくのは、ただ弄ばれただけ・・・・・慶のような若者が、自分のような熟年女など本気にする分けが無いと、睦美の頭を駆け巡った。
慶にしてみれば、まだ経験の無い盛りのついた若者・・・・・そこにたまたま表れたのが睦美だった。
結局は身体目的で、女だったら誰でも良かった。
そう思いたくなくとも、今の睦美には、そう思わざる得なかった。
そしてここには、若い装いで自信に満ち溢れた時の、睦美の姿は無かった。
半分あきらめようと気持ちの整理が付き、もう一度洗濯物を取り出そうとした時だった。

ブ〜・・・ブ〜・・・・・・

睦美の太腿に振動が伝わった。
そう、携帯にメールが受信されたのだった。
この日は、朝食の時からポケットに忍ばせてる為、政俊にばれないように、メール受信の設定をバイブに切り替えていた。
それだけ睦美は、慶のメールが待ち遠しかった。
先ほどまでの、踏ん切りが付いた気持ちも忘れ、期待を膨らませ携帯をポケットから取り出した。
そして、サブ画面も確認せず、急いで携帯を開けると、睦美の表情は変わった。
メールの送り主は息子の翔太からで、その日の夕方に帰ってくるとの事だった。
家を離れてる大学生の翔太は、決まって月に一度の週末に帰省するのだ。
そしてこの日が、翔太の帰省する日に当たっていたのだ。
睦美は期待していた分、気持ちの落ち込みは隠せなかった。
思わず、苦笑いが出た。
本来なら、息子の帰省を歓迎しなければならない立場なのに、今の睦美には出来なかった。
それだけ、慶の事が愛おしくて止まなかったのだ。
この事で、慶に踏ん切りが付けないでいる自分に、睦美は改めて気付かされた。
それでも今は、帰ってくる翔太の為にも、家の身支度をしなければならなかった。
睦美は、急いで洗濯物を取り出すとカゴに入れ、洗面所を後にした。

同日の昼過ぎのアパートの一室。
テーブルには、カップラーメンの空が無造作に置かれ、ノートパソコンに慶が向かっていた。
例の、趣味クラブのサイトを覗いていたのだ。
そして、自分のページを開いて、前日に書けなかった分も含めて、日記を書いていた。
もちろん、睦美との事は書かずに、他愛のない内容だった。
普段は内向的な為、自分を中々表に出せずにいたので、ネットでの掲示板の書き込みなどは、自分を表現する手段として好んでいた。
このサイトでの日記も、同じように気に入っているのだが、ただ、あくまでも52歳の男なので、書き込みには注意していた。
慶が日記を書き終わって、サイトを閉じようとした時、タイミング良く、自分の絵にコメントが書き込まれてると表示されていた。
しかも珍しく、慶が好んで描いている抽象画に対してだった。
以前、睦美を想像で描いた絵をアップした時は、いくらか称賛のコメントを貰ったが、抽象画に対しては、情事を期待していた睦美と、冷やかし半分のコメントくらいだけだった。
しかし、新たなコメントの内容は、モチーフや色彩の事などで、有名な画家を持ちだして的確に批評されていた。
称賛する部分もあれば、指摘する部分もあるのだが、慶はこのコメントした会員が、絵画に対して精通する人間だと睨んだ。
さっそく、この会員のページに繋ぐと年齢は38歳の男で、日記を読む限り詳しい職業は分からないが、絵画を教える立場の人間らしいようだった。
さらに、絵も何点かアップされていた。
その絵は、風景画が数点で、どれも完成度が高く、誤魔化しの少ないディテールに優れた作品だった。
慶がこのサイトに加入してから、このような感銘を受けた会員と出会ったのは初めてだった。
もしや、これが自分の道を切り開く、運命の出会いとも思えた。
本来なら、これに対してコメントを返したり、相手の掲示板に書き込んで交流を深めるのが習わしみたいな物なのだが、今の慶はそんな気分にはなれなかった。
やはり、睦美の事が気掛かりだった。
慶は、そのままサイトを閉じると、ベッドの上で仰向けになった・・・・・。


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