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偽りのデッサン
【熟女/人妻 官能小説】

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第1話 抽象画-1

雪もちらつき始めた初冬の昼下がり。
マンションの一室で、一人の中年男性がノートパソコンと向き合っていた。

『続いてのニュースです・・・・・今日深夜2時半頃・・・〇〇市〇〇町のコンビニエンス・ストアーに刃物を持った二人組の男が・・・・・・・・』

液晶テレビからはニュースが流れているが、それに注目する事無く、男はただパソコンの画面に向かって一つのサイトに注目していた。
そのサイトは中高年を中心に、自分で創作した文学作品や美術などの作品を公開して、お互い品評し合うサイトだった。
それ以外にも、掲示板への書き込みやメールのやり取りもでき、会員同士の交流を深める事も出来たのだ。
その男もサイトの会員で、絵画を描いては度々公開していた。
男は30代後半くらいで、大学で美術の講師をしていた。
一度はプロの画家を目指したが、自分の才能では開花するのは困難な道のりだとすぐに気づき断念した。
それでも、絵画と無縁な仕事を選ぶのは心苦しく思い、大学の美術講師に落ち着いていた。
容姿に関しては、背は低く少し小太りな感じで髪も薄く、お世辞にも異性を魅了するほどでは無かった。
本人も、趣味の絵画に夢中な事も相まって、特定の異性に興味を示す事なく未だに独身であった。

男は、ある会員に注目していた。
モダンで独創的なタッチの抽象画を描く会員だった。
抽象画と言えば描く対象物が無く、作家の持つ感性で描く作品が多かった。
このような抽象画は、自分の才能を引き出そうとする若手の作家に多く、中高年が趣味で始めるには面白味に欠ける物だった。
ほとんどが、風景画などの対象物のある作品の中で、この会員の作品は異彩を放っていた。
全く絵画に興味無い素人から見ればただの落書きにも見え、実際にデッサン力の無い者でも描く事が多かった。
ただこの会員の場合は、時おり女性をモデルにした鉛筆画が公開されていて、デッサン力に関しても素人とは思えないほどの腕前だった。
その中には裸婦画もあり、モデルの女性は自分の連れ添いか、もしくは裸になれるほどの親しい間柄なのかも知れないと思っていた。
まあ、何かの写真を参考にした可能性もあるのだが、男にとっては今は興味のない事だった。
それよりも、毎日のように書かれていた日記が、三日前から更新されてないのが気掛かりだった。
男は美術関連の業界にも精通しており、いずれこの会員と接触をはかり、紹介する予定でいた矢先の事だった。

『・・・・・・・・警視庁は亡くなったのが木本さんとみて・・・身元確認を急ぐとともに、出火原因を調べている・・・・・・続いてのニュースは、今朝5時頃、〇〇町の〇〇海岸に身元不明の男女二人の遺体が浜辺に打ち上げられているのを地元の漁師が・・・・・・・・』

相変わらず液晶テレビからはニュースが流れ、窓を覗けば雪が降り注いでマンションを包んでいた・・・・・。


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