天狗屋物語(後編)-7
あれから、もう二年がたつ…。
それにしても、晩飯、カップ麺とビールじゃ、体がもたねえよ…ここのところ金がない日が続く。
今夜もヨシエは、爺さんのところに来ているようだ。一週間に一度は、爺さんがもっている鍵で
貞操帯を外してもらうためだ。
奥の部屋から、微かにヨシエの喘ぎ声が聞こえてくる。勃起もしないくせに、あの爺さんときた
らヨシエを縛り上げ、あそこの穴を二本の指で弄くりまわしているのだ。よく飽きないものだぜ。
この前、バーでヨシエに会ったときは、やつれたように目の下に黒いあざのようなクマつけて、
腰が悩ましくふらついていたな…。
結局、あれからミヨコに詫びを入れさせ、オレの前でオマルを使わせたが、ついでに排泄シーン
までバッチリ写真を撮ったら、意外にも彼女はしくしく泣き出したものだ。
しゃべったら撮った写真を学校中にばらまくぞ…なんて脅したら、下着も着けずに逃げるように
帰って行った。その後、オレは、ミヨコの写真をあの高校のスケバングループに売ったけど、
そのあとミヨコがどうなったかは聞いていない。
今夜は久しぶりにあの女が店にやってきた。
やっぱりいい女だ。ひと目見ただけでオレは鼻血が出るほど久しぶりに疼いた。
ゆるやかにウエーブのかかった艶やかな髪と清楚な顔つき…どこか甘く湿り気を帯びた薄い唇…
何よりも先日来たときの服装とは違って、濃紺の洒落たタイトなミニワンピースが色気の漂う女
のからだの輪郭を悩ましく浮かび上がらせていた。
なだらかな胸のふくらみと谷間の翳り、キュッと括れた腰つき、ヒップのラインもオレ好みだ。
オレは彼女の黒いハイヒールの先端から滑らかに伸びた形のいい脚を、足首からむっちりとした
太腿にかけて舌で舐めあげるように視線を這わす。
縛って脚を開かせ、あそこを舐めあげてやりたい…鞭や蝋燭でヒィヒィ啼くほど虐めたい…オレ
は、この女に対する嗜虐の欲望で思わず涎を垂らしそうになった。
女はこの前と同じようにSM用の陳列品を食い入るように眺め、古いSM雑誌を手にすると、
カウンターのオレのところに歩み寄る。眩暈のするようないい匂いの香水が、女の首筋からふん
わりと漂ってくる。
金を支払おうとした女に、オレは思わず声をかけた。
「も、もしかしたら、あなたはMですか…」
女の前でオレのチンチンが緊張しすぎて、言葉を吐きながらも舌がもつれそうになる。
女は言葉を返すことなく、にっこりと笑みを浮かべると買った雑誌をバッグに入れ、店をあとに
した。オレはふと女の後ろ姿を見送りながら、あの女を以前、どこで見たのか…ゆっくりと記憶
をたぐり寄せていた。