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Odeurs de la pêche <桃の匂い>
【同性愛♀ 官能小説】

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第5章  プロヴァンスへ-7

 言葉にならない嗚咽でミニョンに抱きつき、止めどなく流れる涙をミニョンの衣に染みこませました。
 ミニョンと見つめ合っているだけで、何も話す必要はありませんでした。やがてミニョンは私の顔を両の手で支え、深いキスをしてくれました。<ああ……ミニョンの唾液が涙でしょっぱくなっている……>。ミニョンの唾液を飲み込んだ瞬間に味を感じたのです。そして、疼く下腹部。溜まりに溜まったものを吐き出すように、お尻の方へ伝うのが分かりました。汗だったのかも知れません。私の身体の深部にある官能のスイッチが音を立てたように感じました。全身は細かく痙攣し、ミニョンが絡ませている指の先々までが官能をかきたてる触覚になっていました。場所柄もわきまえず、長い間閉じこめられていた官能の疼きは、まるで、眠れる森の美女が王子のキスで蘇るように、ミニョンの唾液で生き返ったのでした。

 私はもう、決してミニョンを離すまいと、しっかりと指を絡ませてルパンタンスのメゾンに帰りました。
<私と一緒に何も感じなくなるなんて、やっぱりモンショコと私は一体だったのね>とミニョンが囁いたように、あの夜から今日まで、どれほど切なく苦しい日々だったことでしょう。
 もうミニョン以外に何も見えませんでした。ミニョンと私は、激しく抱き合い、言葉を交わすべき唇はキスのためでしかありませんでした。唇を合わせたまま、私は、疲れと安堵感で遠のいていく意識のなかで、今眠ってしまったら、全てが夢で、目が覚めたときにはミニョンは消えているかも知れない……眠っちゃいけない……懐かしいミニョンの胸の鼓動を感じながら、ほんの束の間眠ってしまったようでした。
 ハッと気が付くと、キッチンにいるミニョンの後ろ姿が見えました。
 ああ……この時の息詰まる喜び。夢の中の夢ではない。デジャヴュでもない。ミニョンが料理をする音がする。料理の匂いがする。冬の風が揺らす窓の音がする……
 私は後ろからミニョンに走り寄って抱きつき、少女の時代に帰っていました。
「ミニョン……ミニョン……ミニョン…………」
「オーララ……もう起きたの。少しは疲れがとれたかしら? ショコの寝顔を見ていると、あの頃を思い出したわ。私の天使ちゃん。ああ……こんな幸せがあっていいのかしら、神様は嫉妬しないかしら……そんなこと考えてばかり……」
「ミニョン……」
「もう、離れないわ。決して……決してショコを離さない!」
「ミニョン……翔子、感覚を感じるの。ミニョンの涙がしょっぱかったのも、ミニョンに手を握られているだけで、あの時のように、濡れてくるのが分かるの。ミニョンがいなくなってからの私は廃人だったわ。でも、翔子は生き返ったのよ。ミニョン……今すぐ抱いて」

 私はベッドで全てを脱ぎ捨てました。ミニョンは私に背を向け、しずかに衣装を脱いで裸になりました。ミニョンの陶器のような白さは、夕暮れのほの暗さの中で光り輝いてみえました。
 ミニョンが振り返りました。
 ああ……何という残酷な母の仕打ち……あの美しかったミニョンの乳房が、火傷の跡を残して無くなっていたのです。
 次いでミニョンは、私の前に脚を拡げ、あの、ラベンダーが香しく匂うはずのソコを見せました。火傷の跡だけが滑らかに光っており、亜麻色のちぢれ毛も、敏感な真珠も、美しい桜色の襞もなく穴だけが連なっているだけでした。


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