投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

Odeurs de la pêche <桃の匂い>
【同性愛♀ 官能小説】

Odeurs de la pêche <桃の匂い>の最初へ Odeurs de la pêche <桃の匂い> 52 Odeurs de la pêche <桃の匂い> 54 Odeurs de la pêche <桃の匂い>の最後へ

第5章  プロヴァンスへ-6

3、宿命

 夕方近くになると少し冷えこんでくるはずなのに、背中は汗ばむほどで、足は棒になっておりました。私は靴を脱いで、腰掛けている噴水の水でハンケチを濡らし、脹脛から足の甲をストッキングの上から押さえてむくみを冷やしながら、明日もまた頑張ろうと、薄暮の空を仰いで大きく深呼吸をしたとき、目の前の教会から出てきた一群の観光客の賑やかな声が聞こえました。何気なくその声の方を見ると、先導する黒いベールをかぶった尼僧風の女性に気が付きました。
 ほっそりとした黒いワンピース姿、薄暮の中に白く浮かび上がる美しい顔。<ああ……ミニョンに似ている人だなー。でも……探しあぐねた人に逢えるのは、もっと劇的な場面のはずだもの、こんなに簡単に逢えるなんて……>と、切ない気持ちでその尼僧を見つめ続けておりました。
 美しい女性を見ると、誰もが目蓋の裏にあるミニョンと重なる夕刻でした。
 その尼僧が、観光客に向かって何かのゼスチャーをし、語りかける声……あの指の動きまでが似ている……半年なんてまだ苦労とは言えないまでも、1年は覚悟して動き回っている私に、神様が哀れんでミニョンの幻を見せてくれている。 そう思いました。
 幻でもいい……しばらくあの尼僧を見ていよう……私は惚けた人のようにその人を眺めて……ミニョンだわ……どう見てもミニョンだわ……。

「ミニョーーン!!」
 私は立ち上がろうとして、自分の叫ぶ声を耳の奥に聞きながら崩れ落ちました。

「Ohh……Mon Shoko……Mon ange……!」
「この人は……La femme qui existe(実在する女性)なのだろうか……」
「いいえ神父様……神様が私にお与え下さった天使なのです……」
「そうか……この人があなたの言う天使だったんだね。ううーム……あなたの苦しみが、今ようやく分かったような気がする……」
「はい、神父様。私が懺悔し、罰を甘んじてお受けした私の最も愛する人、神に背いてまでも忘れられない、私そのもの……私の分身ともいえる人なのです。モンショコ……モナンジェ……」
 囁くような神父らしい低い声と、応えるミニョンの懐かしい声。
 <ああ……ミニョンも、私以上に私を想ってくれていた>
 それは、喜びなどという言葉では言い表せない、再び気を遠のかせるほどの重い言葉でした。
「ミニョン……ミニョン……」
「あなたの天使が気が付いたようだ。余程歩いたようだね……この足を見てご覧なさい。豆が潰れて……可哀想に。あなたのお部屋でゆっくり休ませておあげ。誰にも邪魔をさせませんから」
「ありがとうございます神父様」
「エス様のお許しが出たのですよ。あなたはここから出る日が来たのです」


Odeurs de la pêche <桃の匂い>の最初へ Odeurs de la pêche <桃の匂い> 52 Odeurs de la pêche <桃の匂い> 54 Odeurs de la pêche <桃の匂い>の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前