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Odeurs de la pêche <桃の匂い>
【同性愛♀ 官能小説】

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第4章 展開-4

2、小夜子

 私の部屋に出入りしていた後輩たちに混じって、いつも静かに振る舞っていた小夜子がおりました。みんなが帰るタイミングを計って、ひとり居残ったように見せかけて、私にフランス語を特訓して欲しいと頼まれました。それは小夜子の口実だと分かりました。私も、小夜子のしとやかな女性らしさに惹かれておりましたから、フランス語で囁きながら彼女にキスをすると、控えめでしたが強い反応が感じられました。<ごっこ>が<本気>に代わった瞬間でした。

 おじさまとサキが久しぶりに尋ねてきたとき、しばらく私の部屋で寝泊まりしていた小夜子も部屋におりました。もっとも、ソファ・テーブルには、沢山の原書が散らばっていて、いかにも勉強の様子に見えましたから、二人はごく自然にソファに掛け、サキは乱れた本を片付けておりましたが、私は内心ばつの悪い思いがしました。
 サキは、私の変わりように驚き、<まるでミニョンさんがいるかと思いましたよ>と言い、おじさまは小夜子を見ながらやたらタバコを吹かしていました。
「ところで翔子……あの子は誰だい?」
「後輩の小夜子って子よ。フランス語科なのにフランス語が苦手だなんて。それで私、今猛特訓しているの」
「そうかい。飾り気のない綺麗な子だねえ……」
「いやだ、おじさま。独身貴族だからって、変な気起こしちゃ嫌ですよ」
「ほんと。お嬢様に何となく雰囲気が……」
「そうー……? ああ、そういえば私、昔はサーちゃんみたいなおかっぱだったわね」
「翔子は変わったけど、ますます美しいねえ。今度の仕事でモデルになってもらおうかな」
「ダーメ。翔子はそういうのダメ。写真嫌いだもの」
「どうして? 人気者になること請け合うよ」
「だから、それが嫌なんですってば。翔子はヒッソリしている方が好きなんですから」
「ハハハ……分かってるさ。ちょっとからかっただけだよ。そのむくれた顔も捨てがたいけど」
 キッチンでコーヒーを点てていた小夜子が、しとやかに膝を折ってテーブルにセットすると、三人の会話の様子が聞こえていたのか、少しはにかんで俯きました。
「このおじさまはね、父の親友でグラフィックデザイナーをなさっておいでなの。結構有名なのよ」
「ケッコウ、はないだろう」
「フフ……。こちらはサキさんといってね、どう言えばいいのかしら。この間まで、私のお世話をしてくれていた人なの。私が母に捨てられた捨て子だったものだから、まあ、乳母っていうより、おばあちゃんかしら……」
「捨て子ですって……?」
「家の中でだよ。翔子はそんな冗談を言うようになったのかい。うれしい変化だね」
「翔子さんのいじわる……」
 小夜子が半べそをかいたので、サキは真面目に説明をし出し、
「お嬢様のお母様は、それはそれはお忙しいお方でしてね。それで私が……」
「ハハハ……サキさん、翔子の冗談だよ。ところでね、そう、さっき言いかけた話だけど。今度僕はアメリカへしばらくの間行くことになってね。なに、2〜3年程なんだけど」
「えッ……どうしてなんですか……? 寂しくなりますわ」
「って泣かせるねえ。こちらの会社で関係のあったヤツからの紹介でね。学校に喚ばれたものだから。ちょっと面白そうだしね、受けた。ただ、サキさんのことだけど。まあ、一応こちらのスタジオはそのままにしておくから、留守してもらえるのは好都合なんだが、やはり寂しいだろうから、ときどき遊びに来てやってくれないか」
「もちろんよ。翔子……おじさまのお家へ行こう行こうと思いながら、この1・2年、ほんとに気持ちにも時間にも余裕がなくて……ごめんなさいねサキ。もう、大分楽になってきたから、必ず行くわ」
「それを聞いて安心した。なに、実のところ僕は、サキさんには本当に助けられたよ。一人の時は気楽だったが、面倒がり屋のせいで喰うのもいい加減で、いつも体の調子が悪かったが、サキさんのおかげでこの間だけで10キロ太っちゃった」
「却って良くないじゃありませんの?」
「いや、またアメリカで20キロほど痩せてくるから」
「変なおじさま……あのね、おじさま……いつか聞こう聞こうと思っていたんですけど」
「なんだい改まって」
「おじさまって、素敵な男性なのに……結婚なさらなかったのは、なぜなの? いけないかしら、こんなこと聞いて……」
「悪かないさ、別に。」
「お好きな方、もちろんいらっしゃるんでしょ?」


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