二人の距離-1
電車から降りた後、橋本クンと二人で改札まで歩いた。
「あの…痴漢、退治してくれてありがとね。それと、相田先生とのこと―」
「あぁ、この前偶然な…でも誰にも言おうとか思ってないし、安心して。…悪い、ちょっとトイレ寄っていい?」
「…うん。」
橋本クンの指は、私の体液で汚れているはずだ。
私も、鏡で今自分がどんな顔しをているのか見たかったし、あんなに感じまくっている姿を見られて、気まずかったから少しほっとした。
トイレの中の鏡はメイクをチェックをする女性で埋め尽くされていた。
先にトイレに入るか…
トイレなんてしてたくなかったけど、とりあえずパンツを下ろしてみる。
股部分がめちゃくちゃに濡れていて、履いている意味がなかった。
もったいないけど、風邪引いちゃう気がして、そのまま汚物入れに捨てることにした。
こんなに濡れてたなんて…
先生の指だと思えって言われたけど、私は確かに橋本クンの指で気持ちよくなってしまった。
胸を揉みしだいたり、下半身に回されたりしている腕は、白衣とは正反対の真っ黒な学ラン…そこから覗く手、先生のものより節ばってゴツゴツしていたし、血管だって先生よりもたくさん浮き上がって…
私、淫乱ないけない子なのかな?私が好きなのは先生なのに…
胸だけでイったのは初めてだった。
それで全身が敏感になってしまっていたから、首筋にキスされたりするだけでイキそうになって、クリもすごく感じて、本当は触られただけでイッちゃってたのに声が出せなくて、橋本クンは気付いてくれなかった。
…橋本クンの、固くなってたなぁ。男の子って、出さなくて平気なのかな?
―って、橋本クン、待ったせちゃってるかも!
個室から出て、手を洗う。
鏡の中の私は、まるで何もなかったかのように普段どおりの顔だ。
ただ…首筋の赤いキスマークだけは、橋本クンと一線を越えてしまったことを物語っていた。
これじゃあしばらく先生の所には行けないな…
橋本クンは、改札近くの柱にもたれていた。
待たせてるのは分かるけど、スカートがめくれるのが怖くて走れない。
「…江口、どうした?」
変な歩き方になっているのがバレてしまったみたい。
「あはは…ちょっと、ね。下着、脱いで捨ててきたの。…」
「そっか…あ。じゃあこれ、腰に巻きなよ。」
橋本クンはリュックの中から学校指定のジャージを取り出した。
「…ありがとう。」
お互い、電車の中のことがあったから、少しギクシャクしながらも学校に向かって歩きだした。
途中、橋本クンがコンビニに寄ったかと思うと、なんとパンツを買ってきてくれた。
「捨てることになったの、俺のせいだし。…店員の目が痛かったけどな(笑)」
そう言って笑いとばしてくれるけど、相当の勇気が要ったはずだ。
「ごめんね、ほんとにありがと。」
橋本クンは、いちいち優しい。なんで私なんかに優しくしてくれるんだろう。
「なんかさっきから感謝されてばっかりだな、俺。」
橋本クンがイタズラっぽく笑う。