投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

さよならの向こう側
【悲恋 恋愛小説】

さよならの向こう側の最初へ さよならの向こう側 13 さよならの向こう側 15 さよならの向こう側の最後へ

第三章 団子と朝顔-7

「…ばぁちゃん?俺のこと…わかるの?」
思わず立ち上がってしまった俺の声は、みっともないくらいうわずっている。
「何言ってるの、亮ちゃんは。ばぁちゃんが亮ちゃんのことをわからないなんてないわよ」
まったくもう、この子は…なんて言いながら、ばぁちゃんは笑って軽く俺のケツをはたいた。
(ばぁちゃん…)
上手く言葉にできないくらいの嬉しさと、あっけらかんとしたばぁちゃんの様子にちょっと拍子抜けした気分と…たぶん今、俺はその顔に複雑な笑みを浮かべているのだと思う。
みんなが言ってた『日によって変わるばぁちゃんの状態』というのがこのことを言うのなら、俺のことを思い出した今のばぁちゃんの状態はいつまで続くのだろうか…。
再び折り紙を始めたばぁちゃんから視線を外したら、俺を見ていた和泉さんと目が合った。
彼女は、微笑みを浮かべたまま静かに右手の人差し指を唇に当てた。
そして、その唇がゆっくり動く。
『た・の・し・ん・で』
(…和泉さん…)
余計なことは考えず、今の状況を楽しめということだろうか。
「…よし、ばぁちゃん!俺にも折り紙教えて」
「あら、亮ちゃんが小さい時にも教えてあげたのに。じゃあ、今日は亮ちゃんの好きな色で折ろうねぇ」
そう言って、ばぁちゃんが選んだのは俺が大好きな『青色』の折り紙だった。

やがて、小一時間ほどして本日の折り紙教室は和やかな雰囲気のまま閉会となった。
満足そうな笑顔のばぁちゃんが、そのしわしわの手で折りあげたのは、青とピンクと紫の、それはそれはきれいな朝顔だったんだ。


さよならの向こう側の最初へ さよならの向こう側 13 さよならの向こう側 15 さよならの向こう側の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前