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さよならの向こう側
【悲恋 恋愛小説】

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第三章 団子と朝顔-5

「すごいっすね、職員さんたち」
ありきたりな言葉しか出てこない自分を恨むが、心からの気持ちだった。
「ありがとう!でもね、夜中にお菓子食べたりもしちゃうんだよ。出勤前には必ずコンビニ寄るもん」
いたずらっ子みたいに和泉さんが笑う。
「普段は、明けの職員はもうとっくに帰ってるはずなんですが、和泉は『今日、亮くんが来るから!』って、うたた寝しながら君を待っていたんです」
「主任!説明しなくてもいいって」
(え、でも…)
「俺、今日来るって言ってなかったっすよ。そもそも、来ること決めたのも昨日の夜だったし」
「うん。でも、来てくれるって思ってた。だって、亮くんは『りょうたろうさん』だからね!」
「…へ?」
「ううん、いいの!あ、ほら、百瀬さん来たよ」
和泉さんの指さす方向から、職員さんに手を引かれてこちらに歩いてくるばぁちゃんの姿が見えた。
…ばぁちゃん、今日は俺のことわかってくれるかな。
それとも、やっぱり昨日と同じような状態なんだろうか。
…そういえば。
昨日、ばぁちゃんが俺のことを『りょうたろうさん』って呼んだ時、俺はてっきり親父の名前である『健太郎』と、俺の名前の『亮』を混同しているんだとばかり思っていたけれど、夕べ、加奈が変なことを言っていた。

『死んだおじいちゃんの弟さん、良太郎っていうんだって』

加奈のことを妹の茂子さんと間違えてるばぁちゃんなら、俺をじぃちゃんの弟と間違えてる可能性は充分にある。
それに、さっき和泉さんも『りょうたろうさん』がどうとか言ってたよな。
でも、確かじぃちゃんの弟って戦争で亡くなったんじゃなかったっけか?
…ところで、戦争っていつの話しだっけ?

「亮くーん!こっちに座ってー」
…まぁ、いいか。
頭の中に生まれたかすかな疑問を気にしながらも、俺は和泉さんに呼ばれるがままに席についた。


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