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さよならの向こう側
【悲恋 恋愛小説】

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第三章 団子と朝顔-2

「加奈、おにぃに言ったよね?おばあちゃんが会いたがってるよって。もう年だから、いつどうなるかわからないから、だからちゃんと会いに行っとこうって」
…そういえば、記憶の彼方にそんなシーンがあるような気もするが…。
「じゃあ、お前は…いや、お前だけじゃない、俺以外のみんなは、ばぁちゃんが変わっていく様子をちゃんと見てきたんだな」
自分で発した言葉が、自分自身に突き刺さったような気がした。
俺だけが知らなかった、とてもとても大きな変化。
曖昧になっていく記憶と、それを加速させるかのように流れる時間のその中で、それでも、ばぁちゃんは俺に会いたいと言ってくれていたのに。
俺は、そんなばぁちゃんの存在を思い出すこともせずに過ごしてきたんだ。
「ホントに…どうしようもねぇ奴だな、俺」
「そうだね。…ここで、今のおばあちゃんに向かい合うこともしないでただ帰るだけだとしたら、おにぃは最低だね」
普段の俺たち兄妹であったのならば、たぶんこのあたりで大ゲンカのゴングが鳴る頃だけど、今日の俺に反撃の余地はない。
「そんなこと言ったって、明後日には帰ること決まってるじゃねーかよ」
真っ直ぐにこっちを見ている妹と視線を合わせられないまま、ぶつぶつと小声で言い訳を呟く俺。
もがけばもがくほど、ますます惨めな泥沼にはまっていくばかりな気がする。
でも、ばぁちゃんに向かい合うって言ったって、あんな状態じゃ…。

『亮くん、これで終わりにしないで!明日の午後、もう一度ここへ来て!』

俺の耳に、ふと昼間の和泉さんの声が響いた。
そういえば、彼女はこう言っていたんだ。
もう一度ここへ来たら、今の、本当のばぁちゃんがわかる――と。


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