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イジメテアゲル!
【学園物 官能小説】

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イジメテアゲル!-11

「ミーさん、落ち着いて。ここは図書館だよ。私語厳禁だよ」
 矛先が自分に向いたことと、真っ赤になる美奈に怯えた英助は無駄と知りつつもなだめようとする。
「英助はどちらがいいのかしら?」
「はっきりしろよ。男だろ?」
「うぅ……、それは、だから……」
 正直なところ、小うるさいのも生意気なのもご遠慮願いたい。というより、どちらを選んだところで後々禍根となりかねない。
「さあ、さあ!」
 美奈と多香子はたじろぐ英助を追い詰める。
 表面上の違いはあれど、根底は同じらしく、サディスティックに輝く四つの瞳には、うろたえる小動物が映っていた。
「……貴方達、とても楽しそうね。素晴しいことだわ」
 静かな、それでいて反論を許さない威厳に満ちた声が背後から聞こえた。
 振り返ると四〇代に差し掛かったおばさん史書が立っている。表面上は笑顔を維持しているが、こめかみの辺りがピクピクと痙攣していた。
「でもここは図書館です。静かにしていただかないと、他の利用者に迷惑になります」
「だって、コイツが……」
「いいですね!」
 なおも食い下がろうとする多香子に、おばさん史書のにんまりとしていた瞳と口がカッと開き、雷のような怒声が響く。
「は、は〜い。すみませんでした」
 三人が仲良く頭を下げると、おばさん史書は「ほどほどにね」と言いながら去っていく。
「まったく、恥ずかしいったらありゃしない。少し離れてくれない? 真面目なあたし達まで同類と思われたくないし」
 千恵が「向こうへ行け」とばかりに手を振ると、美奈と多香子は悔しそうに歯軋りをする。
「もう、英助のせいだからね」
「そうだ、進藤が悪い。しっかり埋め合わせつけてもらうからな!」
 ――お前らのせいだろ!
 そう思っても口に出せば、また一悶着起こしかねない。今後の図書館利用を考えると、おばさん史書に睨まれては不都合が生じると、ひとまず怒りを飲み込む。
 かといってこの場所にとどまるのも精神衛生上よろしくない。適当な言い訳でもして、強引に帰ろうと考えた。
「なぁ、白川、忘れてたんだけど、俺部活で用事……が、白川?」
 英助が話しかけても由美は上の空で、何故か胸元に手を当て、物憂げな様子だった。
「どうしました由美さん? ぼーっとして……」
 彼女の異変に気付いた美奈も訝り、声をかける。
「あ……、進藤君も、大きいほうが好きですか?」
 由美は思いつめた表情で英助を見つめる。その頬は心なしか朱に染まっている。
 一方、出し抜けに「大小」の好みを聞かれた英助は何のことかと悩んでしまう。千恵も由美の突然の奇行にオデコに手を当て、熱を比べたりと忙しい。
 そんな中、突然多香子の鞄から振動音が上がる。
「……ん? あ、メール……、誰からだろ……、あ、ふーん、いひひ……んもう、あたしだって忙しいのに……」
 多香子は携帯をそそくさといじると、荷物をまとめ始める。
「ゴメン、アタシ急用ができた! これで失礼するっす!」
 多香子は合掌しながら頭を下げる。ただし、その瞳には申し訳なさなどの謙虚な色はない。
「ちょっと多香子、レポート押し付ける気? 急用ならしょうがないけど、理由ぐらい話してよ」
 千恵は妙なテンションの多香子に怯みつつも、訳を聞こうと食い下がる。
「どうしても言わなきゃダメ? うーん、恥ずかしいなぁ……でも、千恵がどうしてもっていうなら……教えてあげよっかな」
 朱に染まる頬とくねくね身を捩る仕草から、話したくてしょうがない様子が見て取れる。
「えへへ……、彼氏って奴? メール来てさ、『会いたい』だって。彼氏いると振り回されるっていうか、うざいよね」
 にんまり笑顔で「うざい」と言われても説得力が無い。むしろ遠回しの嫌味と理解した千恵と美奈は眉をひくつかせている。


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