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イジメテアゲル!
【学園物 官能小説】

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イジメテアゲル!-12

「彼氏ってば部活引退してからしつこくってさ。そういうの分かるかな? やっぱ無理だよね、男いないと」
「うざいなら別れちゃいなさいよ」
 聞いてもいないのにべらべらと喋る多香子に、千恵は小声でぼやく。
「来年は離れ離れになるし、その前に思い出たくさん作りたい……だって、恥ずかしいよね」
「その彼氏さんならきっと来年は同級生じゃないかしら?」
 見ているほうが恥ずかしくなるのろけぶりに、美奈もげんなりしつつ皮肉を返す。
「本当は友情も大切にしたいんだけど、焼餅やかれても面倒だしい……」
「多香子ちゃん、彼氏さんがいて羨ましいです……」
 一人素直に羨望の瞳を向ける由美に、多香子は待ってましたとばかりに抱きつく。
「由美姫は本当に可愛いね。そっちでぼやいてる二人と違って素直だしぃ……」
 多香子は二人のボヤキをしっかりと聞いていたらしく、意趣返しも忘れない。
「それじゃ、アタシは行くけど、進藤、あとよろしくね」
「やっぱり押し付けるのかよ」
「別にいいだろ? 女の子三人に囲まれるなんてそうそう無いよ。なんなら相手してあげれば? 寂しそうだし」
 スキップしかねないほど軽やかな足取りで多香子は図書館をあとにする。
 残された千恵と美奈は悔しそうに歯軋りをするだけで、怒りの矛先も無い。
「誰が寂しいそうよ。多香子ったら一人だけ男がいるからって偉そうに」
「千恵ちゃんも彼氏ほしいですか?」
「そうじゃないわよ。アタシは由美がいればいいもん」
「まぁかわいそう。そんな報われない愛では寂しさが募るばかりよ?」
 矛先を多香子から手近な千恵にかえたらしく、ついでに先ほどの意趣返しも始める美奈。
「ふん、美奈はせいぜいその痴漢野郎と一緒になればいいじゃん」
「だから、俺は痴漢なんか……」
「私にとって英助はただの幼馴染ですわ。あくまでもお友達。私の理想はもっと高いし」
 美奈はひとさし指を唇に当てると、思案気に天井を見る。英助は売り言葉に買い言葉だろうと好意的な解釈をするものの、キスをした相手から「ただのお友達」と言われたのはショックだった。あの行為は彼を奮い立たせる為の発破にすぎないのだろうか?
「じゃあ、美奈ちゃんの理想ってどんな人?」
 由美の無邪気な問いかけが、その場に緊張を走らせる。
「そうねぇ、やっぱり私の言う事を聞いてくれて、汗臭くない、頼りがいのある人かしら?」
「残念だったね進藤、美奈は頼りがいのある男が好みなんだってさ」
「久住が言うなよ」
 ここ数日間、昼食の準備やレポート代行、さらには課外活動の補佐と、頼りっぱなしの千恵に言われると複雑な気持ちになる。
「なに言ってんの、あたし達は進藤を頼ってるんじゃなくて、使ってあげてるの。そこ、重要だからね」
「なるほど、一理ある」
 男としてすっかり嘗められているわけだが、英助は妙に納得してしまう。
「そういう由美は?」
「私は……えっと、背が高くて、優しくて、のんびりしてるけど、いざっていうとき力になってくれる人かな。それとね……」
 夢見がちな少女の理想は高いというより複雑であり、果たしてその条件を満たす猛者など現れるのだろうかと一同頭を捻ってしまう。
「ふーん、なんか変わった理想をお持ちですわね、由美さん」
「あとね……、たまに遠くをみたりするの。カッコいいんだよ、その人」
「その人?」
 うっかり口を滑らせてしまった由美は慌てて口を塞ぐものの、しっかり音速で伝わっている。
 恋に恋する少女の心の中にも既に想い人がいた。親衛隊長を自負する千恵ですら知らなかったらしく、驚きを隠せない。


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