片割れハートがぐるりと回る-3
……さて、このへんで話を戻してもいいだろうか。
何って、冒頭の。そう、トイレとお風呂の話。あ、ちょっと、嫌そうな顔しないで。大丈夫大丈夫、もうそう長く話すつもりもないから、ね!
だから、ええと、そう。トイレがお風呂になったようなものなのだ。
「ユキが私の彼氏になった」ということは。
「そういえばゆっちゃん、いつからいたの」
「ええと……」
もうすぐ朝のホームルームが始まってしまう。というわけで、私はユキと一緒に教室へ向かって廊下を歩いていた。
彼は私の質問に少し考えてから、
「『おはようございますトラ兄!ちょっと聞いて聞いて、きのうユキにさあ……』」
「ゆーきちゃーん、それいっちばん最初じゃないのー」
「あ、そう?」
「うん、そう。え、じゃあ、トイレの話も聞いてたの」
「ああ、俺がお風呂になる話」
「いやユキがお風呂になる話ではない、かな」
「ちがうの」
「ちがうよ。それ怖いよ」
「あ、そう」
……んん?
「……なんか、怒ってる……?」
尋ねたら、ユキはぴた、と足をとめた。
で、じいっと私を見る。眠そうな目に、どことなく、苛々した雰囲気。
「…………」
「…………」
「…………ゆ、ゆきひこ、くん?」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………ユッキー、応答せよ、こちらサクラコ、応答せよ、どうぞ!」
「…………」
「……お、応答なし……ユキヒコ隊員、死亡確認」
「…………」
「…………」
「…………はあ」
うわ、なんという嫌味ったらしいため息!