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10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

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10年越しの絆<前編>-6

でも、ちょっと冷静になって考えてみれば、まだ光輝に宮木さんを取られたと決まった訳ではない。
俺は、気を取り直して宮木さんに声を掛けた。

念願叶って再会しても、二人がこの様子なら心配は要らない。
寧ろ、この状況は俺にとっては好都合だ。何の問題も無いだろう。
この状況で俺がすべき事はただ一つ…宮木さんを奪われない様にすれば良いだけの事だ。
そう簡単に、光輝に宮木さんは渡さない。


「ちょっと松田っ!アンタ、いい加減にしなさいよっ!」
一週間くらい経ったある日、俺は突然水沢に呼び出された。
水沢はいかにもイライラとしながら、腕を組んで仁王立ちしている。
「なにを?てか、次、教室移動しなきゃなんないんだけど……」
「授業なんてサボれば良いでしょっ!?」
(そんな無茶苦茶な…)
「あのねぇ、水沢…俺、Sクラスだよ?分かってる?」
「それがどうしたって言うのよっ!?」
(あぁ、ダメだこりゃ……)
水沢は完全に開き直っている。俺の事情など、聞き入れるつもりは更々無さそうだ。

「で、話ってなに?」
俺は諦めて、水沢の話を聞いてあげることにした。ため息混じりで声を出す。
でも、敢えて訊くまでもないと思う。水沢はたぶん、俺が光輝の前で宮木さんに必要以上にベタベタしているのが気に入らないんだろう。
まぁ、見せ付ける為にワザとやってるんだから、多少の反応は無いと困るんだけど……

「瀬沼と聖のことよ。分かってるでしょ?」
(………やっぱりな)
「もういい加減、瀬沼の神経逆撫でする様な真似は止めにしたら?」
「なんのこと?それに、俺は委員会の仕事を忠実にこなしているだけだよ?」
「そう。なら、聖が手伝わなくても問題は無いわよね?アンケートの作成なんて、松田の手にかかればチョチョイのチョイでしょ?」
(今時、チョチョイのチョイって……)
「あのねぇ、水沢…俺は万能人間な訳じゃないの。それに、委員長の補佐をするのが副委員長の務めでしょ?宮木さんに手伝ってもらって何が悪いの?」
「そぉ…なら、他の委員にも手伝ってもらえば良いじゃないの!ワザワザ二人っきりでやる理由が分からないっ!」
「う゛…」
水沢の鋭い切り返しに、俺は何も言えなくなる。
水沢の言う通り…二人っきりで作業をする理由は、どこにも無い。それどころか、他の委員と一緒に作業した方がよっぽども効率が良いに決まってる。
水沢のこういう鋭い所、尊敬を通り越して恐ろしいよ。

「ほら、何も言えないじゃない」
「………」
「いい加減、聖を瀬沼に返してあげたら?」
(返すって…)
水沢の言葉に、腹が立つ。
「宮木さんは光輝のものじゃないよ」
俺は吐き捨てる様に言った。でも水沢は、表情を崩さずに平然としている。


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