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10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

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10年越しの絆<前編>-5

この日から、俺は光輝と距離を置く様になった。
そして、宮木さんと光輝が近付かない様に、自ら進んで宮木さんをうちのクラスから遠ざける様になった。
全ては…二人が再会しない様にする為に……

それでも、例の約束の日が一日また一日と近付く度に、俺はどんどん怖くなる。
『こんなに近くにいるのに会えなかった二人が、いくら約束をしているからって会える訳がない。どうせすれ違うに決まってる』と、もう何度も自分自身に言い聞かせている。
そして、『約束の日になっても会えなかったら、宮木さんはきっと俺のことを見てくれるだろう』と……


でも、俺の期待は見事に打ち砕かれた。
約束の日…光輝は朝から教室に居なかった。
そして放課後、宮木さんのクラスに行くと、水沢が『聖なら約束の男の子に会いに行ったけど?』と俺に教えてくれた。

(最悪だ…)
目の前が真っ暗になる。
もう少し早く手を打つべきだった。
そうすれば、光輝の方は無理だとしても、宮木さんを足止めする事くらいは出来たのに……
同じ想いを抱える二人が、同じ日の同じ時間…同じ場所に向かって出会えない確率は、果てしなく低い。
自分の要領の悪さを呪いたい。いや、詰めの甘さと言った方が正しいか…それでもまだ“会えない”ことを願っているなんて、俺は相当なバカだな……


翌朝学校へ行くと、何故か光輝が厳しい顔をしていた。窓際の自分の席に座って、静かに外を眺めている。
意外だった。
今日の光輝は絶対に幸福の笑みを浮かべているだろうと予想して、覚悟を決めていたのに……

(まさか、会えなかった…のか?それとも、最初から俺の勘違いだったのか?)
多少の疑問は浮かぶけれど、俺は内心、大喜びだ。
何はともあれ、俺が望む方向に転がったのは確かだろう。宮木さんを光輝に取られなければ、それで良い。


「松田君、遅いよっ!委員長と副委員長が来ないで、どうやって話し合いを進めろっていうの?」
若干浮足立っていた俺は、放課後に委員会の集まりが有るのをすっかり忘れていた。
俺が少しだけ遅れて行くと、もう既に皆が揃っていた。宮木さん以外は……

「えぇっと…ごめん。宮木さんもまだ来てないの?」
「そう!てっきり松田君と一緒に居るもんだと思ったのに……」
ここに居る委員全員が、俺の事を呆れ顔で見ている。ハッキリ言って、相当居心地が悪い。
「そ、そうなんだ…まだ教室にでも居るのかな?ちょっと迎えに行ってくるよっ!」
「あ゛ぁっ、ちょっと、委員長っ!」
俺は教室を飛び出した。いや、逃げ出した。
あまりにも皆の視線が痛かったから……


「光輝君の事でも考えてたの?」
宮木さんの教室に入った途端、聞き慣れた声が俺の耳を突く。
(え?光輝?)
よく通る水沢の声…光輝の名前が、俺の血の気を一瞬にしてサァッと引かせる。
「そんなに気になるんなら、本人に会いに行ってくれば?せっかく同じ学校なんだからさ」
(何の…話を……)
「Sクラスになんて…行けないよ……」
宮木さんがボソッと呟く。まるで今日の光輝みたいに、何やら難しい顔をして……

(あぁ、やっぱり二人…会えてたのか……)
せっかくの浮かれ気分が、一気に降下する。
朝の時点では少なからず覚悟を決めていた筈なのに、やっぱりこの状況は精神的に堪える。
出来ることなら、知りたくなかった。


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