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「風雲鬼」
【ファンタジー 恋愛小説】

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「風雲鬼」〜第一話『ヒロイン(?)は怖がり屋!?』〜-3

『わかったよ。じゃあ勝手に呼び方決めるからな?……そうだな……』

そう言いながら三雲は少女の容姿をまじまじと見つめ、やがて思い付いたようにひとつ手を叩いた。

『よしっ!
“ミコ”に決まり!』

少女は、それを聞いて唖然としてしまった。
なぜなら『ミコ』とは少女の容姿 ── 赤と白の袴姿、いわゆる巫女装束── を何のひねりもなく表したものだからだ。

巫女の格好をしているから『ミコ』……単純明快なのか、思考能力が低いのか……
ひとつ言えることは、現在の状況を作り出しているのは、間違いなくその性格が原因になっているということだ。



「ミコ……ごめん。」

「うるさい、バカ」

三雲は、嘘がバレた瞬間引っぱたかれた頬と、つい先ほど鉄拳を喰らった後頭部をさすりながら何度も謝り続ける。
がしかし、ミコは相手にしようとしない。

……ああ、相当怒らせてしまったな……

三雲はため息をつく。
だが、それと同時に前を歩くミコもため息をついていた。

……あんなに取り乱してるところ見られちゃうなんて……

ミコの頬は、うっすらと赤らんでいた。
混乱のあまりに、半泣き状態になってしまったことが余程恥ずかしかったようだ。
(暴力女のレッテルを貼られることは恥でもなんでもないらしい)
さっきから頬を両手で覆ったり頭をブンブン振ったりと、不審な行動を繰り返している。
だが幸か不幸か、後ろを歩く鈍感君はそんなことに気付くわけもない。

なんとも気まずい雰囲気がふたりの間を漂っている。彼らの影響を受けてか、山までがシンと静まり返っている。



そんな時──
ある異変が起きた。

それは今まさに、眼前を通り過ぎる旅人ふたりに襲いかかろうとしている。

「……?」

三雲は辺りを見回し、歩を止めた。

何か……いる?

異変に真っ先に気付いたのは、三雲だった。
気の流れの微かな変化に、敏感な反応を見せる。

この少年普段は鈍いところがあるが、こと直感とか本能とかに関しては優れたものを持っているようだ。

そうしているうちに三雲の目の前の茂みが、気を張っていなくてもわかるほどに不気味にうごめいた。
何かが潜んでいるのはもう明らかだ。


三雲は刀の鞘(さや)に手を当て、身構える。
無意識に呼吸が止まる。

瞬間、空気がヒリつき、緊張が走った。


ふとミコの方を見ると、頭を抱えて何やら呻き声を上げていた。


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