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「風雲鬼」
【ファンタジー 恋愛小説】

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「風雲鬼」〜第一話『ヒロイン(?)は怖がり屋!?』〜-2

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それから少し時間が経ったころ、ふたりは(さっきよりは)大人しく歩を進めていた。

「…で、なんで嘘なんてついたの?」

「いや、その……」

少年は口を濁らせる。
盛大に腫れ上がった頬をさすりながら…。

「みまち…」
「──見間違えたなんて言わないわよねぇ、三雲クン?」

言葉を遮断された少年は、恐怖に顔を歪ませた。
少女が、身も心も凍りついてしまいそうな程の不気味な笑みを浮かべていたからだ。
返答次第では殺られる……少年は本能的にそう感じた。

少年の名は三雲(みくも)。物語の、主人公的存在である。
色あせた紺色の衣服に、腰に刀をぶら下げるその姿はサムライを思わせるが、歳の頃は十四とまだ若い。
濁りの無い目からも若さと純粋さが読み取れる。

山道をゆっくりと歩きながら、三雲は己の若さを呪っていた。
ほんの少しの悪戯心でついた嘘が、これほどまでに己の身を苦しめることになったのだから…。

「えぇっと…ね」

恐怖で回らない頭で、三雲は必死に言い訳を探す。その間も、少女は絶え間なく三雲に冷たい視線を送り続けている。
その重圧で、三雲の心臓は潰れてしまいそうだった。

そして震えた声で、三雲はようやく愚行の理由を述べだした。

「や、山登りに…なんか飽きてきて……その、し……刺激が欲しくて…」

ゴカァァン!!!
次の瞬間、三雲の頭は前方に弾き飛ばされていた。

「あ た し は 虫キライなのよぉぉぉーーー!!!」

倒れかけた三雲の首根っこを掴んで、力まかせに振りながら少女は叫ぶ。
おそらく、三雲がなんと答えても同じ結果になったことだろう。

「ゆるしてミコ……
ゆるしてミコ……
ゆるしてミコ……」

哀れ……人形の如くガクガクと首を振りながら、三雲はうわごとのように何度も呟くのだった……




三雲が何度か口にしている『ミコ』というのは、ご察しの通り少女のことを指している。
歳の頃は十ニと、三雲よりふたつ歳下である。
歳相応に体は小さいが、やや切れ長な目と整った鼻筋が、年齢以上の落ち着いた雰囲気をかもし出している。
見た目と性格が大きくかけ離れているのは、もはや言うまでも無いが…。


さて、実は『ミコ』というのは正しい名前ではなく、三雲が勝手につけた呼び名である。
ひと月ほど前、このふたりが出会った時、三雲がどれだけ聞いても少女は決して名乗ろうとしなかった。
そして諦めた三雲は、こう言ったのである。


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