impertinent teachar&student−5-5
『…ちょっと、笑いすぎ。お仕置き』
美雪の方に向かい、煙草を灰皿に置く。
そして、美雪に素早くキスをする。
ちゅっと小さく音がする。
『…煙草臭っ!体に悪いよ?』
眉間に皺を寄せながら言う。
『嫌、これは止めれない。』
『止めなさいよ。でないと、こうしてやるんだから!』
そういって美雪は、俺の頬を両手で摘む。
『いだだだっ!分かったよ!止める!』
『分かればいいのよ』
そういって、彼女は手を離してくれた。
それから、俺は一切煙草を吸うのを止めた。
俺は美雪の言うことなら、何でも受け入れることができた。
美雪の言うことは、世間的に見ても間違ってないし、無茶も言わない。
俺はただ、美雪の喜んだ顔が見たかった。
『頑張ったね』
って言って欲しかった。
『好きだよ、聖』
そう言ってもらえることが、嬉しくてたまらなかった。
俺の生活は彼女中心だった。
彼女がいなくなるとまわらなかった。
だから、本気で教師になろうとも思った。
元々、教えるのは嫌いではないし、親も反対はしなかった。
それに向けて勉強もした。
もちろん彼女と一緒に。
そして彼女と付き合い始めて、3度目の冬がやってきた。
彼女は、秋に司法試験に合格をした。
俺はというと大学の推薦制度があり、付属高校に教師としての採用が決まった。
街はもう冬景色。
クリスマスに向けてのイルミネーションが煌びやかに街を彩っている。
そんな中、俺らは家で過ごしていた。
『こんな寒いのになんで、みんなは外に出たがるのかな』
寒いのが苦手な彼女が、チューハイを片手に呟く。
『そうだな…』
『…聖、私地元へ帰ろうと思うの』
『地元?』
『うん…私は実は東北の方、出身でねぇ』
ソファにもたれ掛かりながら言う。
『そうなんだ…急だね。まぁいいんじゃない?たまには里帰りも』
『里帰りじゃない。向こうで…就職するの』
…え?
今、何て…?
そんな気持ちの俺を他所に、彼女は続ける。
『私、来年、27になるじゃない?結婚適齢期かなぁ〜なんて…』
彼女が俺を見る。
結婚?
そんなこと、初めて考えた。
『…でも、ここにいても就職見つかるじゃん?結婚も焦ってするようなもんじゃねーし。それに…』
『親にね、帰ってきなさいって言われてるの。それに…』
彼女は、持っていたチューハイのグラスをソファの前にある、テーブルに置いた。
そして、体を俺のほうに向けて、目を見る。
『許婚…じゃないけど、婚約者が向こうにいるの』
真っ直ぐ、俺を見ながら言う。
俺は頭を鈍器で殴られたような感覚に陥った。
『…それって…』
『黙っててごめんなさい。実は、うちの実家地元じゃそこそこ有名で、それもしきたりとかにうるさいの』
『…俺は、もう美雪と一緒にいれないのか?』
『…えぇ。』
短く、はっきりと答える。
こんなときにまで、彼女の性格が発揮されている。