ヴァンパイアプリンス3-1
直射日光が照りつける、ある昼下がりの事。
「…何て話そう…」
月下はケーキ片手に、結の家へ向かっていた。
今日は久しぶりに結の家に行く。
昨日の夜、結から遊びのお誘いがあったのだ。月下は喜んで誘いにのった。
月下は今日、宏樹と付き合ってる事を結に告白しようと考えている。
月下は結が宏樹をスキな事を知っていたので、ずっと言えなかったのだ。
結には隠し事をしたくないと、月下は腹をくくった。
「ん?」
結の家まで後少しの所で、月下は地図を片手に彷徨っている人を見つけた。
「あの〜…どうかしました?」
放っておけなくなった月下は、その男性に声をかけた。
振り向いた男性に、月下は誰かの面影を見た。
(あれ…この感じどっかで…)
「水無月って家を探してるんだけど…」
男性は荷物を肩から下ろし、月下に地図を見せた。
「水無月…あ。宏樹の家ですか?」
その地図は確かに宏樹の家までの地図だった。
「そうそう!」
(あ…誰かに似てると思ったら、宏樹か!)
漆黒の瞳も、笑顔も確かに宏樹の面影があった。
「それだったら、この道を曲がって、三番目の角を曲がってすぐですょ。」
月下は身振りを使って丁寧に道を教えた。
「ほぉ〜…こっちか。」
男性もわかってくれたようで、また荷物を背負った。
「ありがとう、お嬢さん。助かった!」
「いいぇ。」
「じゃぁ…また。」
男性は元気良く、歩いていった。
(また…って?…まぁイイか。)
月下は最後の言葉に引っ掛かったが、気にせず再び結の家に急いだ。
(さっきの人…宏樹のいとことかかな〜。)
男性は目も笑顔も似ていたが、宏樹よりもやんちゃな感じがした。
(金髪だったし…年齢も上っぽぃし…)
月下が男性の事を考えながら歩いているといつのまにか結の家に着いていた。
(よし!頑張れ、私)
月下は気合いを入れ、呼び鈴を押す。
―ピンポーン
「やっほッ!久しぶりだな!宏樹」
男性も宏樹の家に着いていた。
「親父?!何でこっちに!?」
「アメリカから帰ってきたッ!しばらく泊まるぞッ!そこんとこ、ヨロシク」
宏樹父、参上。一波乱ありそうな予感がしないでもナイ。
「ソコ座って!今、お茶入れてくるから」
「うん…」
月下は結の部屋に通されていた。
結は月下が持ってきたケーキを皿に移し、お茶を持ってきた。
「ハイ。」
「ありがとう…」
結は月下の向かいに座る。
月下は結の入れてくれた紅茶を一口飲んだ。
「あのね…結ちゃん。」
結はケーキを頬張っていた。もう半分を食べおわっている。
「ん〜?」
「結ちゃんに隠してる事あるの…」
結は手を止めた。
「何?」
月下は下に視線を落とした。
「あたし…宏樹と…水無月くんと付き合ってるの…」
(言っちゃった…)
「へ〜!スゴいじゃん」
「え?…ソレだけ?」
結は落ち込むそぶりもなく、あっけらかんとしていた。
「やっぱり水無月くんは月下狙いだったんだ!」
(何で!?)
月下は呆然として、状況が飲み込めないでいた。
「…月下。あたしもある。隠し事。」
そう言って結は、携帯を開いて月下に見せた。
「……え!?」
「そ〜ゅぅ事です。」
結の待ち受け画面には、結と原田が幸せそうにキスをしている写真だった。
「あたしと聖…原田と付き合ってるの。」
「だって…結ちゃん、宏樹の事スキじゃなかったの!?」
「嫌だな〜…あたしは前から原田だけょ♪」
結の笑顔に嘘はナイと月下は思った。
(じゃぁ…結ちゃんがいつも見てたのは、宏樹じゃなくて隣の原田くんだったんだ…)
月下は変な勘違いをしてしまったのだった。
「…なんか、勘違いってわかったらお腹減っちゃったッ」
月下はケーキを頬張り始めた。