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『XXX Friend』
【女性向け 官能小説】

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『XXX ILLUSION』-1

“東京には空がない”なんて誰が言ったんだろう。
東京にだって空がある。
空がこんなにも泣きそうだから、こんなにも重たいから、私は泣きたくなるんだ。
「よっ、奈々、久しぶり……何してんだ?」
「あ、俊樹……雨降りそうだから、駅まで持つかなとか思って」
大学の校舎の出入口で、ぼーっとしていた私に声をかけたのは同じサークル仲間の俊樹。この間、親友の綾香から好きな人だと初めて聞いた。
「ちょっと走るか、俺も帰るトコ」
そう言って、彼は私の手を取って、走り出した。
「は!?ちょっ、ちょっと……」
私も走り出す。
濡れてもいいかもなんて暗い気分は、すっかり吹き飛んでいた。

「雨には降られなかったな」
涼しい顔をして、空を見上げる俊樹に対して、私はバテバテで、肩で息をしていた。
「……いきなり、何な、のよっ…あー、もぅ、疲れたっ!」
「これくらいで……歳だなぁ。スグにぶよぶよのおばちゃんになるぞー」
イジワルそうに、楽しそうに笑うのが小憎らしい。
「ウルサイっ」
「ちょっと休憩していくか」
そう言って、駅の中に入っているコーヒー店を指差す。
「……俊樹の奢りね?」
「はぁ?……しょうがねぇな」
そう言って、カウンター席しかないその小さなお店に入る。
「適当に買うから、座って休んどけよ」
「えっ?あ、うん……」
俊樹の強引さにとまどいながらも、私は従った。
丈弘はもちろん奢ってくれたけど、私も側について二人でメニューを選んでた。
そんな些細なことでアイツのコトを思い出し、また私は視線を泳がせる。
「ほれ」
「ひゃぁっ!何するのよっ」
いきなり首筋に当てられた飲み物の冷たさに私は悲鳴を上げる。
「わりぃ、わりぃ」
「悪いと思ってないでしょ。中の方にも水滴伝っちゃったじゃん……まったくぅ」
鎖骨の少し下に落ちた水滴を指で拭う。
視線を感じ、俊樹の顔を見る。
「ん?あぁ、何でもない。……そういえば、このごろサークルに顔出さねぇよな」
ボロボロに泣いたあんな告白の後で、丈弘に会わす顔はなかった。
アイツを避けるために自然とサークルからも、足が遠退いていた。
「このごろ、ちょっと忙しくて……そういう俊樹は今日、サークルはいいの?」
「サボり」
サボりの理由は聞かなかった。
自分だって理由はごまかしている。
「ふぅん」
とりあえず、買ってきてくれた飲み物に口をつける。
「甘っ!?何コレっ!!」
よく見ずに一口飲んで、私は驚いた。
コーヒーは柔らかいベージュ色をして、なおかつ、その上にはホイップクリームやらキャラメルやらがかかっていた。
「えっ?甘党じゃなかったっけ?」
「そうだけど、コーヒーだけはブラック……あー、びっくりした」
改めてマジマジとその飲み物を見る。
甘いけど、ちょっとビターで、それこそ女の子な飲み物。
「俺のと変える?カフェオレだけど砂糖は入ってないぜ」
「……いや、いいよ。甘いの好きだし、疲れた時に甘いのっていいらしいよ」
クリームをすくって舐める。甘いのは大好きだ。
「このごろ、お疲れ気味だしさ……」
「あんまりムリすんなよ」
ポンポンっと私の頭を叩いた俊樹の手が、丈弘の手を思い出させた。
ゴツゴツした大きくて暖かい手。
「何だよ、急に泣くなよ……俺が泣かしたみたいだろ」
「……ごめん」
暖かい涙が自然とこぼれた。
コーヒーが甘過ぎたのかもしれない。
「泣くなってば」
俊樹は私の頭を肩に引き寄せてくれた。
綾香の前でも、もちろん丈弘の前でも流せなかった涙。
「……奈、々?」
唐突にかけられた言葉に、涙をぬぐって振り返ると綾香がそこにいた。
綾香だけではない丈弘も……。
いつの間に来ていたんだろう?どうしてこんな所にいるんだろう?
頭の中は疑問だらけになって、私の時は止まった。
「今日、人が集まらなくて、サークルがなくて、それで、丈弘とお茶でも飲みに行こうかって……なんだ、二人付き合ってたのかぁ。知らなかったぁ」
迷子のような笑顔で綾香が笑う。丈弘は何も言わない。
「……私、丈弘と付き合うコトにしたから、ね、大丈夫だよ。ね、気にしないで」
あわてて付け足すように綾香が言う。
丈弘は何も言わない。
頭が動かない。
何ヲ言ッテルノ?
丈弘ト付キ合ウ?
何も聞こえない。
綾香がまた何か言って、店を出て行くのをただ見ていた。


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