海辺でのデート-1
5分前に智美のアパートの前に車を止めると智美がバスケットを抱え乗り込んで来た
「待ったの?」走らせながら聞くと
「今2階の部屋から降りてきたところです]
目を輝かせ渡部を見つめ 少し大きなバスケットを大事そうに抱えて居た
「それは?」と渡部が言うと
「お昼作りました海で一緒に食べようかと思って」と照れた様に言った
バスケットを押さえ 車の中で智美は饒舌にトレンドドラマの話映画の話
好きな絵の話としゃべり続け 1時間ほどで海岸に着いた
折りたたんだシートを抱え 海岸を歩くシーズン前の砂浜は
竿を海に投げ込む釣り人と波打ち際で遊ぶ子供を見る家族連れが居るぐらいだった
シートに腰を下ろし智美が体を寄せ渡部の腕を抱き込み頭を渡部の肩に預け
海を見つめ始め 汐の音だけが二人を包む
「渡部さんお名前は?」智美が顔を上げて聞いてきた
「和也」渡部が答えると
「和也さんて呼んでも大丈夫かな?」不安そうに渡部を見た
「良いよ」答えると智美の顔が明るく成り
「和也さん」と渡部を見る
渡部は智美を優しく見つめ
「何?」
「呼んだだけ」と眩しそうな顔で智美は渡部を見つめた
汐の音を聞きながら渡部は横に成り目を閉じ 波の音が耳をくすぐり
智美は渡部の顔を見続けていた 目を開けると智美の輝くような目と合う
「お昼します?」体を ずらし二人の間にサンドイッチと唐揚げ卵焼き
蛸の形のウィンナなどの入ったタッパーを出して来た
「朝頑張ったと」照れながら呟き サンドイッチを渡部に渡して来た
口に運ぶのを不安そうに見て
「美味しいよ」渡部が言うと
顔を輝かせ
「いっぱい食べて下さい」自分も口に運び始め
食事を終え汐の満ち引きを二人は黙って見つめていた
智美が岩場を指し
「あそこ行って見ます?」
渡部に言いシートを畳み岩場へと歩き出した
空いた腕を智美は抱き着き渡部の腕に
胸の膨らみを感じながら岩場を登り始め
智美が立ち止まり鼻を鳴らしながら 靴に砂が入ったと訴え
肩を貸し智美の足から靴を抜き砂を落とした
目の前に短いスカートから張りのある腿が開き白い物を見せ靴を履かせ
潮だまりで小魚を追いかけ時間が過ぎていた気が付くと日が大分落ち
帰ろうかと促し車に向かった
帰りの車中智美は陽に当たり少し赤く成った顔をシートに預け眠っていた
街に入る手前のレストランに入り 早い夕食を取る
ピーク前のレストランは従業員が要所に立ち迎える準備をしていた
智美が寝たことを渡部に申し訳なさそうに詫び
渡部は優しい目で智美を見ながら頷いた
アパートの前で止めると何か言いたそうな
智美に
「月曜ね今日はご馳走様」渡部に言われ
智美は寂しそうに玄関へと入って行った
日曜何時も行く公園に行くと琴音が中年の婦人と手を繋ぎ入ってきた
滑り台に走ると何度も階段を上がり遊ぶ
飽きて来たのかジャングルジムに登り一番上まで登ると手を上げ
大きな声で
「やったー」とはしゃいでいた
中年の女性は下から琴音の動きを心配そうに見上げ
一つ一つ鉄棒につかまりながら琴音が地面に着くと
中年の女性が琴音に何か言っている琴音は中年の女性を振り払い
渡部の座ってるベンチまで走って
渡部を陰にして中年女性の目から隠れる様に 蹲った
渡部が振り返り
「琴音ちゃんお早うと声を掛け」
「ボールのおじさんだ」と琴音は笑顔で答えた
「琴音ちゃん行きたい処有る?」と聞くと琴音は少し考え
「潮干狩り」と大きな声で答えた
「パパとママと一緒に行ったんだ貝をいっぱい取ったら
パパとママ偉いって褒めて呉れたんだよ」 目を輝かせ話した
中年女性が近ずくと琴音が走り出し 暫く追いかけっこが続き
女性がベンチに腰掛け琴音の遊ぶ姿を見ていた
公園の時計を眺め琴音に声を掛け手を繋ぎ帰って行った
後ろ姿を見送ると渡部は自宅へと車を動かした
渡部の業務が忙しさを増し飯田、宮崎の抜けた職場の補充は掛けてはいるが
まだの中渡部が主な仕事を引き受け
合わせて営業のプレゼンのヘルプが重なり一つ一つをこなしていく渡部を
前田ですら感嘆の目で見てた
退社時間が過ぎ渡部の周りだけ明かりが灯る部屋に
智美が静かに入ってくる
渡部が手を止め優しい目で智美を見て
「今日は少し遅くなるから 先に帰って呉れるかな?」と言うと
「頑張って下さい」と持ってきたコーヒーをテーブルに置き帰って行った
コーヒーを飲もうと手を入れると
渡部を待つ間飲もうとしたココアのカップが残されていた
火曜の朝仕事が始まり 係長少し説明したいので
皆に時間貰って良いですかと渡部が尋ね 構わんよと許可を得て
皆のパソコンの変更と操作の説明を渡部が始め課員たちは
自分のパソコンを操作しながら何時こんな事を渡部が終わらせたのかと
渡部の説明を聞き
智美以外は感嘆の目で見ていた