インクブス・ゲーム-16
「いや。やめて」サージの声が響いた。
「ほら、もっと楽しめ」
「たすけて、ヒトミ。 サヤ」
「なに、おまえは女みたいなのがいいのか、だから毎晩ヒトミにさわらせていたんだな」
サージはただ歯を食いしばっていた。
「どうだ、夫の感触は」
「どうして、おまえなんか」
「俺の子を産むんだよ、それを止められない方法を俺は知っているんだ」
「こんなこと、だめ」
「本当に駄目なのか、後でいっしょに考えよう。結婚してからな」
ウルシの動きはどんどん早くなっていく。
抱き合う二人の上に影が差した。
「なんのまね」サヤだ。
「気の利かないやつだな、これは俺のものだ」やめようともしない。
「さあ、一滴も無駄にするんじゃないぞ」ウルシは、うめくサージの中へ放出させた。
サージがそれに気が付いて叫んだが、もう遅かった。
さらに一歩遅れたサヤが呪文を唱えた。
「乙女を狙う陰よ
古の王族の下僕たるカンビヨンの子よ
あなたは蛾
女という明かりに吸い寄せられては
満たされることなく
闇に散る
身の程を知り
闇に消えよ」
この呪文で、おまえは、このすべてを忘れた。―――――
こんな大っぴらな事件を起こしたおまえだ、次にすることが、自分たちに害を及ぼすかもしれないと、同族たちはみんな恐れているよ」
「もうやめる、見逃せ」
「もう遅い、おまえはわたしの血をも盗もうとした」
「何もしてない。俺はマイを狙っていただけだ。エリ卿の孫娘をたぶらかして城を手に入れようとしただけだ。もともとはそれが母の夢でもあったんだ」
「マイは我が血族。お前を許さないよ。これだけの騒動を引き起こしたからには覚悟はできているね。 だれもがわたしの正当性を認めてくれるでしょう」
「おまえは何者だ」
「我はアダムとリリスの子、踊る魔女アグラットは我が母のひとり、マイはその眷族である。 わたしは両性具有。魔女でありウイッチである。スクブスでありインクブスである。」
「リリスはアダムから逃げたのだぞ」
「お前がそれを言う? 何万もの夜は来る。上から重なる夜もある。さあ、ただの怪物よ、お前の役割は終わった。ここはもう我が領土なのだ」サヤが見下した。