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この向こうの君へ
【片思い 恋愛小説】

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ハナツバキ@-4

「お待たせしましたー」
台所から現れた稲葉の手には3人分の、
「カルボナーラ?」
と、テーブルの真ん中に野菜サラダ。
手際良く並べられるフォークもお皿も雑貨屋さんからそのまま持ってきたような可愛らしい物ばかり。
「稲葉、何者?」
「何で一人暮らしの男の家に生クリームがあるんだよ」
口々に疑問をぶつけるあたし達とは対照的に、
「耕平君すごい!何でもできるね!!」
純粋に誉めるすずちゃんとにやけまくる稲葉。
2人の上にハートが浮かんで見えるのはあたしだけだろうか。
絶品のパスタを頬ばりながらそんな事を思った。

「また来て下さいね」
笑顔に見送られ、邪魔してやろうと考えていた罪悪感に少し胸が痛む。今度来る時は手みやげの一つでも持ってくるよ。

結局何をしに行ったんだか分からないあたしとちくんはいつも通りの言葉で別れた。
「じゃあね」
「うん、バイバイ」
一つだけいつもと違うのは、背中は見たくないと願うあたし自身。
「バカ女…」
呟いてドアを閉めた。
ついさっき恋が終わったとこなのに、性懲りもなくまた片思いを始めてる。
しかも相手は同僚で親友で6年も一緒にいる男。今更って自分でも呆れるよ。
優しいから。
話を聞いてくれるから。
側にいてくれるから。
さっき、稲葉をかばった姿がカッコ良かったから。
理由なんか分かんない、この数分のうちに好きになっちゃったんだもん!だからこそ2年の片思いが吹っ切れたの。稲葉の緩んだ笑顔が嬉しかったのもすずちゃんを少し好きになれたのも、そこにちくんがいてくれたから。
『いいよ、本気になって』
言葉通り本気になったあたしをちくんはどう思うかな。
告白する時は恋と友情の両方を賭けるんだ。

生まれたてのこの気持ちが気のせいだと思いたかった。
振り向きもせず帰ってしまう人が、あたしを好いてくれてるはずがないのだ。


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