カルテ2 青山藍 29歳 銀行窓口係-5
大きい
硬い
熱い
そうとしか形容できない。
欲しい
欲しい
欲しい
意識にはそれしか存在しない。
今まで欲しかったものを口にせず、奉仕することで相手に意思を伝えようとしてきた藍だ。
右手でやさしく幸介をしごく。
根元をしごき。
くびれた部分に指をはわせ。
先端をこすり。
なんとか幸介も我慢できなくなるように、幸介から求めてくるように、そう願いながら一生懸命に奉仕した。
しかし、幸介はニコニコしながら藍を見つめるだけだ。
透明な液体が滲み出て、藍の掌はねっとりと濡れた。
幸介はどんどん硬度を増し、いまにも精を吐き出してしまいそうに思う。
藍は不安を感じ始めた。
(まだなの?まだ入れないの?)
藍は幸介の欲望が理解できない。
(まさか、このまま手だけで終わっちゃう?)
いや!
ほしい
はやく欲しい
強く念じる藍の唇が薄く開いた。
(ねえ、頂戴)
それが言いたい。
声を出さずに唇の形だけで伝えようとするが、それさえもできない。
勇気が出ない。
幸介の愛撫は変わらずに続いていたが、直接的な刺激ではないので藍は達することはできない。
もういきたい、これでいかせてと右手に力をこめて幸介を強く握った。
しかし、固く膨張した幸介は藍の握力を容易に跳ね返してしまう。
「お・・おねが・・・」
藍の喉から声が出始めた。
「なに?」
幸介が聞く。
「ほ、ほし」
「なに?」
「い、いれ」
「なあに?」
がんばれ藍さんと幸介が念じる。
「・・・お願い、これいれて!欲しいの、あなたのこれが欲しい!」
幸介の念が通じたのか、ついに藍は言葉にした。
幸介が藍の両脚を開き先端を当てた。
「はい。わかりました藍さん」
そして言葉にして答え、ゆっくりと挿入を開始した。
幸介がたっぷり時間をかけて根元まで沈んだとき、藍の瞳から涙が零れだした。
藍は嬉しかった。
自分のすべてで男性を包めていることが嬉しかった。
「藍はどう?」
藍が幸介に聞く。
「暖かくて幸せだよ」
幸介が笑顔で答えてくれる。
感極まって瞳から涙が零れ落ちる。
「幸介さん、藍は幸せです。好き、好き、好きよ、こう・・・」
藍が幸介の名前を呼ぼうとする。
幸介がそれを遮る。
「僕じゃないでしょ?」
藍は大きく瞳を開き、幸介の顔をまじまじ見つめた。
「ごめんなさい。し、慎一さん、慎一、好き、好き、愛してる」
大きく開いた瞳を閉じ大きく叫び幸介を強く抱きしめた。
藍自身、幸介に詫びたのか、慎一に謝ったのかわかっていない。
藍に応えるように幸介も快感を送りこむ。
「いい、いいの、慎一さん、いい、藍、感じてる、もっと、もっとして。藍は貴方のもの。あなた、慎一、あああ〜」
藍は瞬く間に達した。
慎一に抱かれていると思い込んだ大脳は藍の肉体に絶頂という信号を送り込む。
大量の愛液が潮のように噴出し、身体が小刻みに痙攣する。
こんな逝き方は初めてだ。
幸介の背中に藍の爪が刺さる。
強く暖かな力が藍の身体を包んでいた。
藍は、そのまま眠りについた。
藍を手放した幸介がバスルームに向かった。
今度は、ゆっくりと湯船につかり一日の疲れを取る。
大きく息をして膨張したモノを鎮める。
バスタオルを腰に巻き、かなりの時間をおいて部屋に戻った。
眠りについたはずの藍がベッドの上に正座をして幸介を待っていた。
両手はきちんと膝の上に揃えられている。
身体には何もまとっていなかった。
両腕で押し寄せられた乳房が大きく見える。
またもや幸介の分身に血が流れ始めてしまう。
「ふう〜」
大きく息をはきながら幸介が近づくと藍が言った。
「ごめんなさい」
「あらたまって、どうしたの?」
「幸介さん、お口でさせて、最後まで終わってないでしょ?せめて、そのくらい。本当はもう一度って言いたいのだけど、もう私、他の男性とはしない」
泣きそうな顔を幸介に向けた。
「いいんだよ藍さん。もう治療は終わったからね。どう?」
幸介は明るい声だ。
「はい。わたし幸せになります。慎一さんにプロポーズします」
藍は頬を染めて言った。
幸介は奥歯をかみ締めて我慢した。
カルテ 青山 藍(あおやま あい)29歳独身 銀行窓口係
完治