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精神科医佐伯幸介のカルテ
【女性向け 官能小説】

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カルテ3 木村怜香 32才独身 脳神経外科医-1

藤堂倫との出会いから1週間が経過していた。
別れ際、幸介から「連絡する」と言ったが約束は果たしていない。
倫の心はどうなっているか.
意図した方向へと向かっているだろうか。
ほんの少し心配ではあるが、今はまだ会う時期じゃないと、つのる気持ちを抑えながら幸介がノートパソコンを開いた。


カルテ3 木村怜香(きむられいか)32才独身 脳神経外科医

【幸介の卒論】
実力に裏づけされた確信のある自信は自らの自我を拡幅させることがある。
拡幅された自我は、時に他者の自我も包括できると大脳を錯覚させるが、実際は包括出来たと認識する自分の自我に大きな影響を及ぼしている。
 
 
西湘バイパスを西に向かって真紅のポルシェが疾走していた。
ハンドルを握る木村怜香は、箱根に所有するリゾートマンションを目指している。
次々と差し迫る先行車を軽やかにかわし、目的地への距離を縮めていく。
夏の夕暮れは遅く、勤務を終えたこの時間でもまだ太陽は水平線上に姿を見せていた。
角度の低い陽光はサングラスをかけた怜香の顔を赤く染めていた。
濃い黒色のサングラスの下には三角定規を思わせる高い鼻があった。
肩の上で綺麗に揃えられたストレートヘアーが日本人離れした怜香の横顔を際立たせている。
怜香はさらにアクセルを踏み込み、制限速度を50キロはオーバーしていた。
次々に迫りくる先行車を直前で追い抜くタイヤ音は車内にまで届いていた。
いつになくイライラした感情のやり場に困っている怜香のドライビングだった。
イラつかせている原因は助手席に座っている男だ。
悠然とシートに腰を降ろした男は、移りゆく窓外の景色に目を向けていた。
波に反射した夕日を目を細めて眺めている。

御茶ノ水の病院駐車場で待ち合わせてから、男が口にした言葉はたった一言「やあ」だけで、問いかけには笑顔で肯いた。
怜香は水着の日焼け跡が見えるほど胸元の開いたキュートな白いタンクトップと膝上20センチのゼブラ模様のミニスカートを着けている。
しかも下着は鋭角に切れ込む黒いショーツのみでブラジャーはない。
張りのある容の良いバストがタンクトップを押し上げ、その先端がくっきりと影を移していた。

アクセルを踏む細く長い脚がミニスカートを押し上げて黒いショーツが見え隠れしているはずだった。
完璧主義者の怜香はもちろんVラインの処理もすませ、黒いショーツは白い下腹部に美しいラインを描き出していることだろうと思う。
気の弱い男なら視線のやり場に困り、ずうずうしい男であればジロジロ覗いているはずだ。
しかし助手席の男はそんな怜香に目を止めることもなく車外の景色を楽しんでいた。
まるで禅宗の僧が座禅行を行っている時のように落ち着き、ゆったりとした空気を身体の周りにまとっている。
怜香は自分のボディーが男達に対して強力な武器になることを知っていた。
現にこれと狙ってはずしたことはなかった。
それどころかほとんどの男は怜香のボディーに懇願さえするのだった。
まあいいわ。
後で見ていなさいと思い、助手席の男を忘れるために三日前のことを思い出し始めた。




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