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精神科医佐伯幸介のカルテ
【女性向け 官能小説】

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カルテ2 青山藍 29歳 銀行窓口係-3

・・・

就職後間もなく5歳年上の先輩に食事に誘われて交際を始めた。
山根慎一、有名私立K大経済卒、融資担当のエリートだ。
性格も穏やかで田舎から出てきた藍の家族のことも何もこだわらなかった。
藍には絶対に幸せにならなければいけない理由がある。
父が他界した後も藍に仕送りをし続け、いまだにお嫁さんをもらえない兄がいる。
その兄のためにも幸せにならなければならない。
藍は慎一にバージンをプレゼントした。
藍は慎一につくした。
生活のほとんどを慎一優先にした。
自分のできることならなんでもしてきた。
将来の旦那様と思い精一杯つくした。
男女の営みも自分の満足は二の次に慎一の欲求処理を優先した。
藍が性に対して淡白なのではない。
どちらかと言えば身体の欲求は強いほうだったかもしれない。
慎一が満足して眠ってしまった後、そっとベッドを抜け出してシャワーを浴びながら自分ですることも度々だった。
慎一も自分を愛してくれていると信じてはいる。
藍は待った。
慎一の言葉を待ち続けた。
慎一の求婚を待ち続けていた。
藍からそれを求めることはできずに時が過ぎていった。
いつしか、藍は待ち疲れていた。
そして、1年ほど前から藍は出会いサイトを利用するようになっていた。
2週に一人のペース、生理前などは3日続けて初対面の男に身体を預けている。
次第に、慎一と会う機会は減っていった。
 
昨日の昼休み、公園でひとり昼食をとりながら、藍は携帯の出会いサイトを開いていた。
慣れた手つきで次々とプロフをめくっていく。
藍は同じ男性と二度は会わないことにしていた。
それが、慎一に対するせめてもの誠意と思っている。
「お前はあの母親の血をひいている」
中学の時に言われたあの言葉は常に頭から離れない。
私は淫らな女なのかもしれない。
でも、でも違うと思いたい。
「名前」 佐伯 幸介(サエキコウスケ)
「年齢」 37才
「職業」 精神科医
「PR」 貴女の心と肉体をつなぎます(料金は応談)
心と肉体をつなぎます・・・文字が光って見えた。

幸介は自宅リビングで藍からのメールを読んでいた。
「明日の土曜、○○ランドへ行こう」
幸介はすぐさま返信した。
約束は11時にした。
 
約束の15分前に正面ゲートに藍が到着した。
待ち合わせではいつも待つようにしている。
待つほうが待たせるよりずっと楽だ。
待たせている間、相手のことを考えると気がきではない。
佐伯幸介・・・どんな男性だろうと思いながら待つつもりだった。
ところが背後から声をかけられた。
「藍さんですか?」
「は・・・い」
あわてて振り向くと、藍の視界は男の胸板でいっぱいになった。
白いポロシャツの胸元から覗いた日焼けした肌が眩しかった。
一呼吸おいて視線を上げると満面の笑みが待っていた。
切れ長の一重の目は笑顔になると少し下がって見える。
顔の真ん中には大きめの鼻が坐り、整然と並んだ真っ白い歯が清潔だった。
鼻には心地よい香りが届いた。
何のにおい?
コロンじゃないと思うけど・・・
香りに気を取られていると、幸介に右手を握られた。
「さあ、入ろう」
幸介はどんどん引っ張っていく。
「チケットは?」
藍は慌てて聞いた。
「もう買ってあるよ」
幸介の笑顔に、(お金・・・)と言おうとしたが、言葉は出てこなかった。
久しぶりのデートだった。
相手が恋人ではないことは、すぐに忘れることが出来た。
キャラクターをからかう幸介
アトラクションではしゃぐ幸介
コーラをすすめる幸介
藍はいつのまにか幸介の腕にしがみつくようにして歩いた。
胸の膨らみに幸介の腕を感じる。
幸介は常にエスコートしてくれた。
藍も素直に受け入れた。
そして、一日中走り回るように遊び、今スイートルームのバスに浸かっていた。

たっぷり、1時間はバスルームにいただろうか。
今まででは考えられないことだった。
いつも相手のことを考え、待っていた藍だった。
「ごめんなさい」
バスローブを纏った藍が呟きながら幸介の待つリビングに戻った。
「10分待っていて、汗を流してくるよ」
そう言い残し、幸介がバスルームに消えた。


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