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ブービートラップ
【ショタ 官能小説】

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優作-1

俺は、サンディエゴ州立大(UCSDとは別の大学)近くの「西貢餐廳(Saigon Restaurant)」に連れて行かれた。一見、中華レストランに見えたが、ベトナム華僑の難民が経営するベトナム料理屋だった。優作の勧めで、phở(スープビーフン)と生春巻を振るまわれた。どれも初めて食べたが、とても美味かった。彼のダチの家族の店だと彼は説明した。

「俺たち、アジア系は、台湾人、大陸系支那人、ベトナム人、ラオス人、カンボジア人、朝鮮人など出身地の垣根を越えて、ここではまあ仲がいいよ。どうしてか、分かるか?俺たちには、お前のような日本人とは違って国家の後ろ盾がない。否、むしろ国に捨てられた棄民たちだからだ。弱い者は、弱い者同士で団結しなければ、ここでは生き延びられない。一見すると、繁栄を謳歌し、平和そうに見えるこの社会は過酷な生存競争の上に成り立っている。実を言うとな、俺は、今日お前を襲ったやつらの状況も理解しているし、それほど、やつらを憎んでいるわけでもない。今日、俺はアイツらを、”mongrel(雑種)”呼ばわりしたが、そう言う俺も立派な『雑種』だ。」

「俺の親父は、大学教授で台湾独立運動の活動家だった。親父は、俺が5歳の時、国民党の白色テロで官憲により日本人の母親と供に殺された。俺は父方の祖父母に引き取られた。俺の身の安全を案じた祖父母は、俺を日本人として育てるため、家では俺に日本語以外の言葉を話すことを禁止した。それで、地元の小学校で覚えた北京語や台湾語を家でうっかり口にしてしまうと、ぶん殴られた。じいさんは、台北の日本大使館で、俺の日本のパスポートを申請したが、父親が日本人ではないという理由で却下された。それでも、何とか手を尽くして、俺を日本人学校に入れる方法を見つけた。」

「だが、そこには俺の居場所はなかった。苗字が台湾人だからという理由で、机に落書きされたり、教科書や上履きを隠されたりといった陰湿な嫌がらせを受けた。別に日本人を怨んではいない。ただ、その時俺は、お前ら日本人達は異質分子を排除することで、自分達の純血性を確認し合い、結束を固めて生きてきたのだと直感的に悟った。じいさんが死んだのを機に、既にアメリカに移住していた親父の弟に引き取られて、4年前にここに来た。」

そこで、「優作さん、じゃあ、どうして”Yusaku”という、日本語読みにこだわっているのですか?」と、俺は尋ねた。

「それは、俺の母さんが付けくれた名前だからだ。そんなもの簡単に捨てられるはずはないだろう。おい、コウ、俺たちの仲間にならないか?無理にとは言わんが。」

「今の俺には力はないけど、群れで行動したくはありません。ぼくは、むしろ優作さんと個人的に繋がっていたい。」

「好きにしろ。何か困ったことがあったら、俺のところに言ってこい。」


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