か-5
「・・・・いい」
「あ?訳わかんないオンナだな。
成田さんと話したいなら行って来い」
私は白木の腰から手を離した。
白木はピクっと分からない程度に腰を揺らした。
その後、ゆっくりと再び、ジーンズのベルトループに指をひっかける。
「ココにいる」
「・・・そーか」
「うん」
「その指、ずっとそこに引っかけとけ」
「うん・・・」
白木はそれ以上なにも言わなくて。
私もそれ以上何も言わなくて。
でもジーンズに引っかけた私の指だけがドキドキしていた。
腰に手を回す、本気の付き合いじゃないのは二人とも分かっている事で
でも、白木のベルトループに指をひっかけられるのは私だけ。
その役が、なんだか特別なものに思えて
私はこの指を外すもんかと、ぎゅっとループを握った。
楽しそうな成田先輩の声は
私の耳には入ってこなくて
暑い気温と、熱い鉄板の温度で
私の指は汗ばんでいた。
成田先輩と里香さんはお似合いだ。
確かに大失恋なんだけど・・・
今は、見ていて涙が流れる程じゃない。
「結局アイドルと同じ、だったのかなぁ」
「あ?なんか言ったか?」
「ううん。暑いね、って」
「だな」
その後、白木は斉藤を呼んで焼き係を代わってもらった。