京子-20
「何か商売してるとか?」
「唯の高校生よ」
「お金拾ったとか?」
「お小遣いを貰ってきたの」
「いくら?」
「そんなこと陽介が心配しなくていいの」
「ひょっとして村井さんて金持ちなんじゃないの?」
「だからそうだって言ってるじゃない」
「だって1万5000円のオペラのキップ買ったって言ってたし」
「だからお金持ちだって言ってるでしょ。しつこいね加藤君」
「スゲェー。俺金持ちの友達って初めて」
「だから加藤君のお金じゃ無いんだよ」
「うん分かってるけど」
「何で村井さんお金持ちなの?」
「お父さんから貰ったからよ」
「そうか。うちは父さんっていないからな」
「だから貧乏なの?」
「いや。聞いたら別に貧乏じゃないって言ってた」
「誰に聞いたの?」
「母さんに」
「戸山君のお母さん何をしているの?」
「いろいろで良く分からない」
「いろいろって?」
「なんかのデザインしてるんだけど、いろんな物デザインしているから」
「へえ。凄いのね」
「凄いのかな」
「そうよ。デザインで食べていくなんて凄いことなのよ」
「その割には戸山は美的センスが無いんだよな」
「俺の美的センスは独特で人には分からないんだ」
「まあ、そういうことにしておこう」
「それでどうするの? ボーリング行くの行かないの」
「ああ、行こ行こ」
「ちょっと姉さんに言ってくる」
「私も挨拶しないと」
「それじゃ呼んでくる」
「あら、何?」
「寝てたんじゃないの?」
「今起きた」
「出かける」
「何処へ?」
「ボーリング」
「ボーングなんて出来るの?」
「やったこと無いけど簡単だって」
「そうでも無いけど、村井さんと行くの?」
「4人で行く」
「そう。余り遅くならない内に帰って来なさい」
「うん」
「ちょっと待ちなさい。小遣い上げるから」
「いいよ」
「持ってるの?」
「無い」
「それじゃ困るじゃない」
「村井さんが出してくれるって」
「陽介の分?」
「みんなの分」
「へえ。まあいいから持っていきなさい」
「うん」
ボーリングは経験の差がそのまま出て、女性軍が二人とも150点以上の点数を出したのに対して、男性軍は大体100点前後を記録した。薫はセーラー服だが京子は私服なのでスカートが短く、脚が眩しかった。京子はバレーの選手だからブルマ・スタイルを良く見ているのにスカートから覗く脚というのは又別で、陽介はドキドキしながらも目を離すことが出来なかった。薫は華奢な体の割には運動神経がいいようで、あるいは相当に経験があるのかスムーズで綺麗なフォームだった。4人で3ゲームやったのだから結構高いだろうと思って陽介は姉に貰ってきた金を出して薫に渡そうとしたが薫は笑っているだけで受け取らなかった。
「そのお金で木村さんと私に何か誕生日のプレゼントを買ってくれると嬉しいな」
「何がいい?」
「それは陽介君が考えて」
「うん」
加藤君はあれ以来積極的に薫を誘って何度かデートしたらしい。薫は金持ちの娘でしかも可愛いから付き合う相手に事欠きはしないが、余所の学校の生徒と付き合うというのはちょっと新鮮な感じがあって加藤君と付き合っているのだろうか。