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京子
【青春 恋愛小説】

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京子-1

 「あれぇー、お前木村じゃないか。どしたんだ?」
 「・・・・」
 「おい、泣いてんのか? あっ、泣いてる」
 「・・・・」
 「泣くなよ。どしたんだ? 財布落としたのか?」
 「・・・」
 「少しなら貸してやるぞ。500円しか無いけど」
 「・・・」
 「ほら、500円じゃ足んないのか?」
 「馬鹿ぁー」
 「あー、驚いた。急に脅かすなよ」
 「馬鹿、徐々に脅かす奴がいるか。あっち行け」
 「あっち行けってどっち?」
 「どっでもいい、私から離れて」
 「でもいいのか? 室井呼んで来てやろうか?」
 「・・・・」
 「あいつ苦手だけどこんな時だから・・・」
 「何処にいるか知ってんの?」
 「さあー、知らないけどあいつ目立つから」
 「佳枝今病院にいるんだよ」
 「え? 誰か病気なのか?」
 「私今佳枝って言ったんだよ。陽介人の言うこと聞いてないの?」
 「だって、それじゃあの室井が病気になったのかよ」
 「佳枝が病気になったらいけないの?」
 「別にいけなくないけど、あいつが病気なんかするかなあ」
 「病気じゃ無いよ。怪我したんだよ」
 「そうかー、それなら分かる」
 「陽介徹底的に佳枝のこと嫌ってるね」
 「そうじゃないけど、あっ、そうなんだけど、あいつどう見たって病気なんかしそうも無いだろ?」
 「どうして怪我したか聞かないの?」
 「どうして怪我したの?」
 「交通事故」
 「ダンプ?」
 「何でダンプなの?」
 「だって普通の車であいつが怪我なんかするか?」
 「馬鹿。プロレスラーだって車にぶつかれば怪我するよ」
 「そうかな。やっぱりそんなもんかな」
 「当たり前よ」
 「そう言えば昔お相撲さんが交通事故で怪我したっていうの聞いたことあるな」
 「あのね、陽介そんなことどうでもいいの。佳枝の怪我がどの程度だったか聞かないの?」
 「あ? 怪我はどの程度だった?」
 「人のいったことそのまま言うんじゃ無いよ」
 「え?」
 「何処怪我したとか大丈夫なのかとかいろいろあるでしょう?」
 「大丈夫なのか? 何処怪我したんだ?」
 「本当に陽介馬鹿なんだから。ま、いいや。佳枝は怪我しなかった」
 「何だ。それじゃどうして病院行ったんだよ」
 「転んだから一応レントゲン撮った方がいいだろうって行ったのよ」
 「頭か?」
 「珍しく自分の頭で考えて物言ったね。陽介が自分で考えると財布落としたとかダンプかとか突拍子も無い言葉しか出て来ないのかと思った」
 「お前のこと心配して聞いてやったのに文句言うな」
 「大体財布落として泣いてると思ったら500円しか持ってないのに声かけたりするんじゃないの」
 「じゃ、いくらあったら声かけていいんだ」
 「あー、だいぶすっきりした。涙流して陽介怒鳴ってたら少しは気が晴れた。500円あるならラーメンでも食べに行こ」
 「え? 足りないよ」
 「ラーメンは300円じゃない」
 「だから2つで600円」
 「何で2つなの?」
 「俺と木村」
 「陽介は見てればいいの」
 「え?」
 「嘘だよ。ラーメンくらい私が奢ってやるわ。今時500円しか持ってない高校生なんかいないよ。陽介一体いくら小遣い貰ってんの?」
 「別に決まって無い」
 「決まって無いって?」
 「だから金が必要になると貰うから」


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