京子-10
「それで何で加藤君と私を呼ぶことになったの?」
「姉さんが1人じゃ寂しいからもう1人2人呼びなさいって」
「それで陽介が私と加藤にしようって言ったの?」
「姉さんが決めた」
「姉さんが? お姉さん私のこと知ってるの?」
「ううん。男と間違えてた」
「何で私のこと男と間違えてたの?」
「俺が木村って言ったからだろ」
「陽介が『木村にしよう』って言ったの?」
「ううん、姉さんが『その木村って子は?』って言うから、それは女なんだって言った」
「『その木村って子は』って何でそういう言葉が出てくるのよ」
「だから俺の電話聞いてたんだろ」
「電話で喋ってる時私の名前を出したのね」
「うん」
「何で?」
「さあ? いけなかったか?」
「いけなくないけど、薫と陽介で私のこと話題にして何か言ったんでしょ?」
「さあ?」
「それでなきゃ私の名前は出てこないでしょ?」
「あそうだ、『何で俺の誕生日知ってる』って言ったら『木村に聞いた』って言うから」
「ああ、そうか。やっと分かった」
「でも木村何で俺の誕生日知ってるの?」
「電話でも言ったでしょ? 陽介から聞いたんじゃない」
「そうだっけ」
「そうなの。まあ、薫と陽介の2人で決めたんじゃ無いってことが分かったから気分良く行けるわ」
「何が?」
「誕生パーティでしょ」
「俺と村井さんで決めると気分が悪いの?」
「それはそうよ。そうでしょ?」
「どうして?」
「うーん、まあいいわ。何か作って持っていく?」
「何かって?」
「料理」
「あ、それは姉さんが作るって」
「お姉さん料理得意なの?」
「フランス料理からハワイアンまでだって」
「それは凄い。ハワイアンなんて何処で習ったのかしら」
「バナナ切って皿に盛るだけだって」
「えっ、それがハワイアン? それじゃフランス料理は?」
「それはこれから本読んで研究するって」
「あーあ。やっぱり陽介のお姉さんねえ」
「やっぱりって何? 誰の姉さんだと思った?」
「ううん。私少し早めに行って料理するの手伝おうかな」
「木村料理出来るのか?」
「失礼ね。料理くらいは出来るわ」
「木村んち母さんが料理苦手なの?」
「何で?」
「だって『女の癖に料理が出来ないのか』って言ったら『料理は主婦の役割だから未婚の乙女は出来なくて当たり前』って姉さんが言ってたんだ」
「なるほど、そういう考えもあるんだ」
「木村何作れるの?」
「日本料理から中華まで」
「へえ、凄い」
「別に」
「日本料理ってどんな?」
「おしんこ」
「おしんこ?」
「おしんこは外国料理じゃ無いでしょ」
「じゃ中華は?」
「カップラーメン」
「カップラーメンを作るの?」
「うん」
「それは凄いな。バナナとおしんこなら俺でも出来るけど」
「カップラーメン作るって何のことだと思ってんの?」
「だからカップラーメン」
「はぁーん。カップラーメンを作るんじゃなくて、カップラーメンを買ってきてそれを食べれるようにお湯を注ぐこと」
「え?」
「陽介はカップラーメン食べたこと無いの?」
「あるよ」
「自分でお湯を入れるんじゃなくて誰かにやって貰うの?」
「それくらい自分でやるよ」
「だからそれ」
「それって?」
「もういいよ。陽介相手にジョーク飛ばすと後で説明するのに疲れちゃう」
「姉さんも時々そう言うな」
「後でお姉さんに電話して相談してみるわ」
「何を?」
「だから手伝うかどうか」
「そんなことするよりコンビニで何か買った方が早いんじゃないか」
「そんなの駄目」
「そうかな。結構安くて美味いのがあるんだよ」
「陽介は主役だからそんなこと心配しないでいいの」
「そうか。それじゃまかせる」
「そう、それでいいの」