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京子
【青春 恋愛小説】

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京子-11

 日曜日はいつも陽介は遅くまで寝ている。朝早くからサイクリングに行くこともあるが、大体昼前に出かけて疲れると帰ってくるというのが、洋介のパターンである。普段と違って起こされることが無いから遅くまで寝ている。普段も起こさなければ遅くまで寝ているに違い無い。たっぷり寝て気分良く起きていくと台所に若い女がいた。姉さんと2人並んでこちらに背を向け、ガス台の前で何か話している。

 「誰?」
 「あ、おはよう」
 「あれえー、木村じゃ無いか」
 「そうよ」
 「そんな格好してるから何処の女かと思った」
 「あ、これ? どう?」
 「どうって?」
 「似合う?」
 「何だか女みたいに見える」
 「それどういうこと。普段は男に見えるの?」
 「あ、違うけど」
 「いつもセーラー服だから意識しないけど、私服着ると急に女っぽく感じるっていうこと。だな? 陽介」
 「うん」
 「そうか。この前うちでやった時もセーラー服着ていたからね」
 「そんな服持ってたのか」
 「セーターとスカートくらい持ってるよ」
 「何時に来たの?」
 「10時」
 「おしんことバナナ作ってんの?」
 「何おしんこって?」
 「あ、いえ。こっちの話です。陽介君そうじゃないのよ。もっと良いもの作ってるからね」
 「何か調子狂うな」
 「何が」
 「木村が陽介君なんて言うからだ」
 「どうして? 陽介っていう名前でしょ?」
 「いつも陽介って言うじゃないか」
 「そうか。今日は誕生パーティだから格上げしたの」
 「それじゃいつも誕生パーティだといいな」
 「どうして? 陽介って呼び捨てにされると気分悪いの?」
 「特にそんなことも無いな」
 「陽介は陽介でいいの」
 「俺お腹すいた。姉さんバナナ1本くれ」
 「バナナなんか無いよ」
 「何で? ハワイアン料理作るんじゃ無かったの?」
 「あれはジョークだよ」
 「何だ。結構美味そうだと思ったのに」
 「フルーツ・サラダは作ったよ」
 「じゃそれでいい」
 「駄目。皆が来た時に食べるんだから、パン食べなさい」
 「うん」
 「あっち行って食べるのよ」
 「何で?」
 「見てるとやりにくい」
 「何か汚いことするなよ」
 「何? 汚いことって」
 「見てないと思って落っことしても又拾って入れるとか」
 「陽介じゃあるまいし」
 「いつもやってるじゃないか」
 「人の前でそういうこと言うんじゃないの」
 「いえ、私も良くやるんです、そういうの」
 「勿体無いもんね」
 「ええ」
 「しょうがねえな」
 「死にはしないよ」

 「はい。少しだけフルーツ・サラダ持ってきてやったから、パンと一緒に食べなさい」
 「おっ、美味そうだな」
 「あの子いい子じゃない。全然口が悪いってことなんか無い」
 「まあ姉さんよりはいい」
 「騒々しくも無いし」
 「姉さんよりは静かだ」
 「馬鹿。サラダ返せ」
 「大人げないこと言うな」
 「陽介が言わせるんだ」
 「陽介君、私のこと口が悪くて騒々しいって言ってたんですか?」
 「あ、盗み聞きしたな」
 「盗み聞きしなくても聞こえるもん」
 「普段は口が悪くて騒々しいだろ」
 「まあ。いやあね。ホホホ。その件については明日ゆっくり話しようね」
 「何で?」
 「私のいない所でじっくりとっちめようって言うんだよ。遠慮しなくていいのに」
 「あ、いいえ。可愛がってあげるんです」
 「子供だからね。十分可愛がって鍛えて頂戴」
 「子供だから可愛がるっていうのは分かるけど鍛えるってどういうこと?」
 「明日になれば分かる」


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