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それから俺達は、小さなケーキとシャンパンを口にしながらおしゃべりに花を咲かせていた。
今までろくに飯を食ってこなかった莉奈は、ケーキを一口二口程度しか口に出来なかったが、それでも「美味しい」と言ってくれたことがとても嬉しかった。
おしゃべりの内容はほぼ俺の仕事の話ばかりだったが、彼女には俺の話がとても新鮮だったらしく、目をキラキラさせて、聞いていた。
しんしんと雪が降る深夜の街並み。
賑やかに飾り付けられた部屋。
ぐっすり眠る子供の顔。
そして、プレゼントを枕元に置いた時の幸福感。
本当は猫の手も借りたい程の忙しさなんだけど、こうして口にすればやっぱりこの仕事が楽しい事に気付かされる。
今回は、最後にアクシデントが起きて、まさか俺が人間の女とクリスマスをお祝いするなんて思っても見なかったが、これはこれですごく楽しい。
ホワイトクリスマスのジンクスは、やっぱり当たっていたのかもしれない。
◇
どれくらい時間が経っただろう。
いつのまにか外で原チャリが走る音が聞こえてきた。きっと新聞配達だろう。
カーテンの隙間から覗く空はまだまだ暗いけれど、その音がもう明け方だと教えてきたのだ。
テーブルの上には空になったグラスや皿がひとまとめ。
「莉奈、明け方だから俺はそろそろ帰る」
スクッと立ち上がる俺を見上げた瞳が、一瞬歪んだような気がした。
続けて莉奈も立ち上がり、軽く頭を下げる。
「サンタさん、今日はありがとう」
「夢威叶くんにプレゼントを渡せなかったのが心残りだけど……」
本人以外の人間にプレゼントを渡すのはご法度。
なので、夢威叶のプレゼントはサンタ・カンパニーに持ち帰りになる。
夢威叶の顔、一目でも見てみたかったけどな。