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サンタ・カンパニー
【ファンタジー 官能小説】

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-2

帰ると口にした事で、微妙に気まずくなってしまった空気に、咳払いを一つ。


でも、俺はサンタクロースだから、帰らなくてはいけないんだ。


「俺、サンタクロースなのにホント無力で申し訳なく思ってる。サンタの仕事は、プレゼントを配る事なのに、夢威叶くんに渡せなくて。それにアンタの抱えてる問題を何一つ助けてやれなかったし……」


だけど、莉奈は小さく首を横に振った。


「あたし、あなたに感謝してる。あなたが来てくれなかったらあのままダメになってた。夢威叶を奪われてひとりぼっちで、クリスマスなんて大っ嫌いになってた。あなたが一緒にクリスマスをお祝いしてくれたから……あたし……」


おしゃべりしてた時、あんなに楽しそうに笑っていたのに、また莉奈は顔をクシャクシャにして涙をこぼした。


ホント泣き虫だなぁ、コイツは。


「莉奈……」


「あたし、頑張る。あの人には、“夢威叶にはもう会わせられない”って言われたけど、本物のサンタクロースに会えたんだもん、夢威叶にもまたいつか会えるって信じてる」


泣きながらも舌を出しておどけて見せる彼女に、胸が締め付けられて、次の瞬間、俺は莉奈を抱き締めていた。


「サンタさん……」


細くて小さな身体。またコイツが1人になってしまうのかと思うと、俺まで目の奥が痛み始める。


風呂上がりの髪の香りが鼻をくすぐり、抱き締める腕にさらに力がこもった。


このまま1人にしたくなんてない。したくないのに、俺は行かなければいけない。


クリスマスなのに、望むものを与えてなれないなんて、なんて無力なんだろう。


「ゴメン、ゴメンな」


「なんで謝るの?」


「さあ……」


「それに……どうして抱き締めてくれるの?」


「さあ、何でだろうな……」


笑って言うつもりが、勝手に声が震えちまう。


帰るつもりなのに足が動かない。


莉奈も何かを感じたのか、俺の身体に腕をまわした。


「サンタさん、そんな優しくされたらさ……あたし……もっとワガママ言いたくなっちゃうよ……」


彼女の声も震えているのがはっきりわかる。


込み上げてくる生唾をゴクリと飲み込む。


多分、俺も莉奈もこうなるってきっとどこかでわかっていたんだ。


そっと彼女の顔を覗き込むと、潤んだ瞳がこちらを見上げていて、


「お願い……今だけってわかってるけど……抱いて欲しい……」


と、小さな声で呟いていた。



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