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サンタ・カンパニー
【ファンタジー 官能小説】

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-6

女の涙には免疫のない俺。


それでなくても彼女は子供を奪われた傷心の身だ。何が引き金になって泣くかなんてわからない。


慌てて彼女の側に駆け寄ると、洗い上がりのシャンプーのいい匂いがした。


「あ、あのっ、これって余計なおせっかい……だったりして……」


自信の無さから語尾が弱くなる俺に、莉奈は両手で顔を覆いながらブンブンと首を横に振る。


まるで、濡れた髪から水しぶきが飛んで来そうなほどの勢いだ。


そして彼女は、


「違うの……」


と言うと、ゆっくり覆っていた手を下ろして、俺を見上げる。


不意に高鳴る胸。


この女、こんなに綺麗だったのか。


「とっても嬉しいの……」


すっぴんで幼く見える莉奈の笑顔を初めて見た俺は、ビビッと全身に電気が走ったような気がした。


「……アンタ、笑ってた方が絶対いいよ」


「え?」



潤んだ瞳で見つめられるのがなんだか照れ臭くて、思わずあさっての方向を向く。


「今日はクリスマスなんだ。俺じゃ夢威叶くんの代わりにならないけど、こんな日まで泣いて過ごすのは悲し過ぎるだろ? だからってアンタの悩みが解決するわけじゃないけど、今日だけは1人にさせないよ」


「それって……」


「だから、今夜は俺が一緒にクリスマスを祝う。仕事もここが最後の一件だったし、明け方までに帰れば何の問題もない。本物のサンタクロースとクリスマスを過ごせるなんて、アンタ、めちゃくちゃラッキーなんだぜ」


俺のおどけた口調がツボに入ったのか、莉奈は真っ赤な瞳のままクスクス笑い出した。


「あたし、本物のサンタよりも夢威叶と過ごしたい」


「おーい、本物のサンタを目の前に、そういうこと言うか普通?」


それでも、人差し指で瞳を擦り付けながら小さく笑う莉奈に、腹は立たなかった。


莉奈は、本当に純粋な女で、立派な母親なんだ。


本物のサンタと過ごすクリスマスより、自分の子供と過ごしたいとハッキリ言えるなんて、よっぽど夢威叶を愛している証拠だ。


そんな彼女を俺は助けることは出来ないけれど、せめて1人にはさせないでいよう。


サンタの存在を信じている純粋な莉奈が、クリスマスを嫌いならないように。






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