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原則、俺の姿は人間には見えない。
ホント、それは俺にとっても残念な事実なんだ。
俺は、そりゃあもう、そこらの俳優なんて目じゃないほどのイケメンなんだが、それを証明する手段がないからな。
原則には、例外はあるんだが、君達みたいな大人ならまず俺の姿を見ることは不可能なんだ。
その例外とは、サンタクロースの存在を“純粋に”信じている奴には見えてしまうことだから。
今までこの仕事をしてきて、サンタクロースの存在を純粋に信じている大人になんて一人も出会ったことがない。
子供なら、見える奴がたくさんいるんだが、得てしてこんな深夜に起きてることはないので、サンタクロースは空想上の存在とされてしまうのだ。
だから、俺達もまた仕事はしやすいのだが。
というわけで、堂々と玄関から入った俺は、最後のプレゼントを手に、早く仕事を片付けようと、靴が散乱した狭い玄関を通り抜けた。
「汚ねえ家だなぁ」
ここでもやっぱり眉間にシワが寄る。
リビングに抜ける廊下には、脱ぎ散らかした服。
出すつもりがあるのかないのかわからないゴミ袋は、当然分別なんてまともにされておらず。
それに染み付いたタバコの臭いがあまりに不快で、思わず舌打ちが漏れた。
俺もズボラな性格だから、掃除は気の向いた時にしかしないけど、ここまで散らかしたことなんてない。
微かに安物の香水の匂いも混ざっていたので、なんとなくここの親の姿が想像つくような気がする。
こんな家庭で育てられる子供は、不憫だ。