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サンタ・カンパニー
【ファンタジー 官能小説】

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入って見てわかる、このマンションの古さ。


どうやらこのマンションは高齢者が多いようで、ファミリー世帯は両手で数える程度らしい。


そんなマンションでの配達なんて、ベテランの部類に入る俺にしてみれば、赤子の手をひねるようなもん。


サンタ・カンパニーでもエースと謳われる俺は、他の従業員よりも広いエリア、より多い配達個数をこなしている。


三田社長からは直々特別報酬を頂くほどで、リストラ前線からは一番遠い所にいる。


この仕事が終わったら、ちょっと高い酒でも飲もうかな。


なんて、思いながら、俺は今年最後の仕事である、9階の突き当たりのドアの前に立ちはだかった。


差し込みタイプの表札には、油性マジックで「奥野」と書かれている、が。


「汚ねえ字……」


書き殴ったような乱雑な字に、思わず眉間にシワが寄る。


字には性格が表れると、個人的には思っている。


上手い下手ではなく、丁寧に書くか書かないか。


それだけで、家主がどんな人間なのかはある程度予想がつく。


それに極めつけが、子供の名前だ。


俺が手に持つ配達伝票には、子供の名前が記入されているのだが、


「えー、何々……奥野、夢、威……叶……これでゆうとって読むのか……」


と、さらに眉間のシワが深くなった。


典型的なキラキラネームって奴か。そもそも“威”っていう字は“う”なんて読まねえぞ。


偏見は持っちゃいけないってわかるが、子供に奇抜な名前をつける親は高確率でDQNなのである。


ヤンキー上がりの、赤ん坊抱きながらタバコをふかすような、そんな柄の悪そうな親。


そんな家庭がとても多かった。


そんな家庭にプレゼントを届けるたびに、俺はどうにもいたたまれなくなる。


散らかった部屋に、タバコのヤニで黄ばんだ壁、ボロボロの服がハンガーに干しっぱなしになっていたり、テーブルの上には空になったカップラーメンの容器が転がっていたり。


そんな境遇にありながらも、サンタの存在を純粋に信じてくれる子供の枕元にプレゼントを置くと、胸が締め付けられてしまうのだ。


また今回もこのパターンなのか、と思うと気が重くなる。


ホワイトクリスマスのジンクス、今年はハズレか。


そんな事を思いながら、深い深いため息を吐いて、俺はドアをすり抜けた。


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