爆乳マゾ女との奴隷契約は双方向に義務が生じる-1
「あっ…………ああ…………ああん…………ああっ…………」
歩き出した後、僕達はなかなか部屋にたどり着かなかった。浴場から僕の部屋まで、そんなに距離があるわけではないのだが、とにかく歩みが遅かったのだ。
僕が実梨亜さんの乳首を引っ張る、実梨亜さんが「あっ……」と声を漏らして1、2歩んで立ち止まる、また僕が乳首を引っ張るの繰り返しで、遅々として移動ははかどらなかった。
一度、強めに引っ張ったら多めに進んでくれるんじゃないかと期待して試したところ、
「ああああっ!!」
と実梨亜さんは叫んで痙攣し、その場にへたりこんでしまった。
「だ、大丈夫!?」
「ああ……も、申し訳ありません……御主人様のお指からきつめの刺激をいただいたものですから、この無駄に大きい乳に電気が走ってしまって、頭が真っ白に……もう少し控えめに曳いていただけますか?」
「う、うん……」
どうやら、かなり扱いが難しいらしい。結局また、1、2歩ずつ移動していくことになった。可能性は低いとは言え、こんなところを誰かに見つかったらどうしようと不安になる。
「大丈夫かな……こんな牛みたいな歩き方で……」
「はい……牝牛のように肥大化した汚いおっぱいに触れていただいて申し訳ありません……」
「……いや、そうじゃなくて、着くまでに時間かかりそうだから、実梨亜がおっぱい片っぽ出してるところ誰かに見つかっちゃわないかなあって……」
僕の言葉を聞いた実梨亜さんは、『はっ!』という表情になった。
「も、申し訳ありません御主人様……私ったら、頭に行くはずの栄養を全部牛おっぱいに取られているものですから、気が付かなくて……」
「いやいや、分かってくれれば……」
「奴隷の癖におっぱい片方隠すなんて傲慢ですよね。その上に御主人様に荷物を持たせるなんて失礼なこと……さあ、お荷物を奴隷にお預けください」
「…………」
全然分かっていなかった。だが、実梨亜さんの伸ばした手が剣のように僕の喉元に突き付けられると、その圧力に抵抗できずに、持っていた着替えや洗面用具を手渡してしまう。
「…………」
荷物を受け取ると、実梨亜さんは無言で右の胸をこっちに向けてきた。仕方なく僕は右のおっぱいも出させて、両方の乳首を摘まんで歩き出す。
乳首両方摘まんで歩いたらさっきよりもっと遅くなるかと思いきや、左右の乳首を交互に引っ張ることで、実梨亜さんを一歩ずつ途切れさせずに歩かせることができた。僕自身は完全に横歩きになるのでちょっと危なっかしいが、移動速度はかなり上がる。怪我の功名だ。
「右、左、オイッチニ、オイッチニ」
「あっ、あん、あっ、あん」
順調に進み始めると、多少余裕も出てくる。僕は実梨亜さんに、ずっと気になっていたことを聞いてみた。
「……実梨亜、今朝とはずいぶんキャラが変わったよね」
「今朝とは、ですか?」
「うん……今朝はナンパしてきた人怒鳴り付けたりして、怖いくらいだったんだけど、今は怖いどころか自分のこと牝牛とか言って、卑屈って言うか……」
「ふふ……御主人様に対するのと他の有象無象の男共に対するのでは、態度が違って当然です。どちらも本当の私ですが、御主人様に対してはずっと今のようにしますから、決して怖がったりなんかしないでくださいね」
「そうなんだ……」
さっきは浴場で締められたときは、滅茶苦茶怖かったんだけどなあ……などと口に出す勇気は微塵もなく、僕は頷いた。気が付くと、僕の泊まる部屋の前まで到着している。
「ここだ。入って」
「はい……お邪魔いたします」
部屋に入って襖を閉めると、実梨亜さんはいきなり浴衣を脱ぎ、オールヌードになってしまった。僕は驚いて尋ねる。
「ちょ、ちょっと、なんで脱ぐの!?」
「え……? 御主人様と奴隷2人だけの空間では、奴隷の着衣は原則として認められないのが常識ですが……?」
「そ、そうだっけ……?」
「はい……それでは早速ですが、奴隷契約書を作成させていただきますね」
実梨亜さんは部屋に備え付けの便箋とボールペンを持って来ると、座卓の前に正座した。2つの巨大なおっぱいが座卓にでんと乗っていかにも邪魔そうだが、全く気にする様子はなく便箋の裏の白紙側にペンを走らせ始める。
「あ……申し訳ありません。御主人様のお名前をまだいただいていませんでした。何かお名前の分かるものをお借りできますか?」
「あっ……うん。ちょっと待って」
そう言えば、僕はまだ実梨亜さんに名乗っていなかった。部屋の金庫の鍵を開けて生徒手帳を出し、名前の書いてあるページを開いて実梨亜さんに見せる。
「申し遅れました……幸島照羽です」
「照羽様、ですね……失礼いたします」
「あっ!?」
実梨亜さんは僕の手から生徒手帳をひょいっと取り上げ、パラパラと中を見始めた。
「……何か気になることでもあるの?」
「住所住所……あったわ。ええと……このご住所はもしかして、アパートにお住まいでいらっしゃいますか?」
「そ、そうだけど……」
「ご家族とお住まいですか? それともお一人で?」
「え……それは……」
「ご家族とお住まいですか? それともお一人で?」
実梨亜さんがじっと僕の眼を見てくる。その視線がいたたまれなくなり、僕は答えた。
「ひ、一人暮らしだよ……」
僕がそう言うと、実梨亜さんはさっと顔を背けた。
「御主人様は私のマンションのすぐ近くで一人暮らし、と……ふひ、ふひひひひ……」
「み、実梨亜?」
「大変失礼いたしました。御主人様。こちらはお返しいたします」
こちらに向き直り、生徒手帳を差し出す実梨亜さん。それを受け取りながら、一人暮らしだと白状して大丈夫だったのか、僕は少々不安になった。