愛獄戯館-10
珈琲店の窓から秋の濃い靄に包まれた雨が降り続いている。
老翁にあの館の近くで見られてから二週間後、ふたたびユミコさんと会うことができ、朝まで
「愛獄戯館」にいたのだが、あのときケイジロウが彼女に感じた気だるさと空虚な憂いに似た
ものがなぜか疼くように込み上げてくる…というのも、ユミコさんの白々と光沢を帯びた肌の
隅々まで唇で愛撫を繰り返したとき、真っ白な肌にうっすらと残った淡紅の筋が縄目であり、
背中や尻肌に仄かに残った条痕が鞭によって刻まれたものであることにケイジロウはうすうす
気がつき、あの老翁がユミコさんにたいしてどんなことをしているのかは容易に推察できてい
るにもかかわらず、あえてケイジロウはユミコさんに聞いてみたのだった。
親子ほども歳が離れた夫であるあの老翁にあなたはどんな風に愛されているのですかと言うと、
愛されているなんてお若いのに変なことをお聞きになるのねと、彼女はクスッと笑い、あなた
はどんな風にわたくしが老翁に愛されているかすでにお気づきではありませんか…と言いなが
らケイジロウの手首をつかむと下腹部の窪みへと導いていった。
ケイジロウが彼女のむっちりとした太腿の内側を撫であげ、恥丘の窪みにすっと触れたとき、
つるりとした指の感触に思わず伸ばした指先を強ばらせたのだった。そこには麗しく生い繁っ
たユミコさんの繊毛のふくらみの気配はなかった。
ケイジロウは恐る恐る彼女の下半身を覗き込む。なだらかな稜線を描く、剃りあげられた蒼白
い恥丘が仄かな月の光をまぶしたようにつやつやと煌めき、恥ずかしげに閉じられた陰唇の
ほっそりとした割れ目の溝が桜色の露で微かに湿っているのを目の前にした彼は、剃り込まれ
た毛穴から滲み出る老翁の高らかな笑いが今にも聞こえてきそうだった。
ユミコさんはケイジロウの顔を穏やかな顔でじっと見つめると柔和な笑みを頬に湛え、あの人
はわたくしを縛り、鞭で打ち、脚を開かせ、あそこの毛を蝋燭で炙り、陰毛を残らず剃刀で剃
りあげたわとさりげなく言い、硬くなったケイジロウのものの先端にやわらかな内腿を押しつ
けてくるのだった。
そんな凌辱的なことをされるのは苦痛ではないのですかと彼が言うと、苦痛だなんてこれっぽ
っちも思ったことはございませんわ、これがあの人の愛し方でわたくし自身もとても充たされ
ているのですからと平然とした顔でつぶやき、あなたはいったいどんな風にわたくしを愛して
くださるのかしら…と、ユミコさんはつつましい言葉をしなやかに噛みしめながら、濃い口紅
の唇を淫猥にゆがめると同時に下半身を蠢かせ、陰唇にぬるりとケイジロウのものを含んだの
だった。