〜 自己紹介 〜-2
新入生歓迎会の幕があがり、これから新入生の自己紹介です。
わたくしも4年前にやらせていただきました。 当時は『名前(番号)』『スリーサイズ』『初潮の年齢』だったように記憶しています。 初潮が早かったわたくしは、当時の寮長様に色々と指摘を頂き、その場で号泣してしまいました。 思えば初潮程度を先輩方に告げただけで泣くなんて、傲岸すぎた若輩でした。
わたくし達の前で、貧相な胸に不釣合いなほど乳首をたたせた少女が、第3姿勢をとっています。 がに股でどのくらい大きな声が出せるのか、キチンと受け答えできるのか、お手並み拝見といきましょう。
「1番であります! は、初オナニーは、幼年学校6年生であります! あの、ぜ――」
十分に大きい声でしたが、途中でB1番が遮ります。
「場所は?」
「えっ……あ、えっと、場所ですか? それって……」
「どこでマンコを弄ったかに決まってるだろぉが! さっさと答える!」
「はいっ。 あの、お布団の中です、じゃなくて、お布団の中であります!」
「つまんない答えだねぇ。 まっいいわ。 おバカさんは寝る間も惜しんでオナってるっていうし、いかにも堪え性がなさそうなアンタには、毎晩布団をビチャビチャにする生活が似合ってるよ。 自分でもそう思うだろ?」
「は、はい! そう思います!」
1番の少女は涙声で、それでも大きく叫びます。 肯定しか許されていないわけですが、それでも自分で自分を貶めるのは辛いものがあるのでしょう。
「いっとくけど、こんな風に指導するのは1番、てめーだけだ。 あとのモンは一発で決めなきゃ承知しないよ? そんじゃ喘ぎ声もつけて、もう一回最初から!」
「はい! 1番であります! 初オナニーは、幼年学校6年生で、朝お布団の中でインチツを弄って――」
「バカかてめーわっ。 『オナニー』なんて百年はえーんだよっ。 てめーらのは『まんずり』か『まんしこ』って代物だ。 おまけにインチツだなんて、意味不明に気取ってんじゃねーよ、ああ!?」
バン! B1番が机を激しく叩きました。
「はっ、はいぃっ、ごめんなさいぃっ」
「弄ったのは『くっさいチツマンコ』で十分だ。 ちゃんと紹介できるまでやり直しっ、ほら、なにボケっとしてんだよ。 最初からだろぉが!」
「はいっ! い、1番であります! 初オ、あっ違います、ま、まんずりは――」
何事も最初が肝心です。 1番の少女はどやされるたびに脂汗を滲ませますが、顔色が悪くなるのと反比例してどんどん背筋が伸び、返事も大きくなってきました。 一言一句訂正される中、言葉遣いも寮に相応しいものへ変わっていきます。
マスターベーションやオナニーといったカタカナ言葉は、気取っている、品があるという理由から、原則として新入生には使用が認められません。 婉曲な表現や学術用語も同様で、例えば寮では、新入生が自分のもちものを『女性器』『ヴァギナ』『膣』『まんこ』といった風に表現をすれば指導を受けます。 新入生は寮の中でも最下等な立場ですから、身分に相応しい表現を常に心がけねばなりません。 具体的には『オマンコ』や『チツマンコ』が適切とされています。
お尻は『オケツ』、アナルは『ケツマンコ』、口は『クチマンコ』、乳房は『パイオツ』や『チチブクロ』に『ミルクタンク』、クリトリスは『クリチンポ』――表現の規制を挙げれば、枚挙に暇がありません。 とはいえ、こういった規制は新入生だけではないのです。 わたくし達Aグループ生でも、一歩教室に入れば様々な規制を受け入れています。 社会には社会の、学園には学園の、教室には教室の言葉遣いがあります。 各担任にもそれぞれが好む表現があるように、寮には寮の言語規制があるというだけの話です。 それらは重複するものもあり、独自なものもあり、ややこしいことこの上ありませんから、まず寮生は言葉遣いのTPOを学ばなくてはなりません。 そういう意味で、全員が自己紹介することはそれなりの意味をもっているのでした。
寮の言葉遣いの基本は、自分の身分に相応しい言葉遣いです。 こうして自分で自分を不様かつ情けない言葉で表現することで、いかに自分が無価値で、無様なのかを認識できます。 そうして初めて寮生活がスタートするといえるでしょう。
「『チツマンコ』丸出し、変態丸出しで失礼します! 1番であります! 初めて『マンズリ』こかせていただいたのは幼年学校6年生のときであります! お布団の中でくっさい『チツマンコ』をおっぴろげ、『オマン滓』だらけの『クリチンポ』をしこしこして、くっさい『オマン汁』まき散らして絶頂したのであります! そ、その時はよくわからなかったので、『あっ、あっ、あー』と、はしたなく大きな声で喘いだのであります!』
涙目になりながらも、大きな声で、最後まで詰まらず通すことができました。
最初に自己紹介をした今年の1番は、比較的物わかりがいいコだったようです。 B1番の指導が10分を過ぎたあたりで、どうにかそれらしい最低限の紹介になってくれました。 酷い年になると、トップバッターの自己紹介だけで初日が終わる場合もありますから、そう考えると順調といえるでしょう。